• 異世界ファンタジー
  • ラブコメ

近況報告。辛辛魚。

コンビニでそれを見つけた時、すっと手が伸びていました。

辛辛魚。
からからうお、です。

ご存じの方には説明不要の代物かもしれませんが、大雑把に説明するととても辛いカップラーメンです。蒙古タンメンとか、ああいった赤々しくて激辛を謳うようなカップ麺。
実際、特製の液体スープを注ぐと、常識をかなぐり捨てた真っ赤でとろみのあるスープが現れます。というか、そもそもかやくの時点で香辛料のつんとくる匂いが鼻を刺してきますし、なんなら私は匂いを嗅いだだけでむせます。なんと弱い。

そんな辛辛魚は年々味や辛さに研究・調整が加えられており、個人的には会うたびに髪色を染めているファッショナブルな知人のような印象です。

今年の辛辛魚は去年と比べて何が違うのか、それを確かめない訳にはいきませんでした。

2021年から続く私の戦績は3戦0勝。いずれも完食は叶いましたが、その後の大惨事にそこはかとない敗北感を味わわされ、未だ確信的な勝利には至っていません。
大惨事の内容は……具体的には書きませんが、辛いものを食べると胃とか腸が大変な事になります。

そうこうしているうちにお湯を注いでから4分が経ちました。

お盆の上には深紅のスープを煮えたぎらせた辛辛魚と、私に味方してくれる頼もしい仲間たちが。
マグカップには牛乳を、お茶碗には白飯を、脇にはバナナを二本(本当は一本ですが心細いので二本にしました)添えて、戦いの準備は完了。

辛いものには乳製品の飲み物が効果的です。その原理はインネパ店でカレーとナンとラッシーを食した時に学びました。それから胃を保護する為にバナナを一本食べて粘膜にバフを掛けます。

さあまずはひと口目――唇が焼けそうな刺激に襲われました。

痛いです。もはや痛い。胃は守れても唇と口内は守れないとこの瞬間に悟りました。この日はもうリップ不要ですね。体感的にもじゅうぶん赤く染まっている事が分かるので。

しかし、ここで怯んではいけません。
この針で刺されたような辛さが残っているうちに次を、また次をと麺を口に運んでいく。これは言わば、辛さに口が馴染むための必要経費。二年前に水をがぶ飲みして再度地獄を見た私とはもう違うのです。

それにしても麺に絡んだ魚粉のスープが美味い。おいしいではなく、美味い。とんこつのまろやかなコクと魚介系の香りが食欲を刺激し、次のひと口を急がせます。病みつきになる味わいとはこの事なのかと、私は辛辛魚に出会ってから初めて理解できた気がします。

牛乳とバナナと白米って、麺を抜きに考えたらいったいどんな組み合わせだよと頭の中の私が正気になりかけましたが、もはや構っていられません。あとは無我夢中で麺をすするだけ。辛辛魚と向き合う時は食事ではなく、戦いという認識をもって臨まなくてはならないのだと過去の私が鳴らす警鐘にだけ耳を傾けました。

やがてすべての麺を平らげて、ちまちまと未練がましくスープをれんげで掬っていく。辛さでむせる事もありましたが、ここまでくれば脳内で反省会を開けるくらいの余裕ができます。

今年も完食できたし、繊細な舌の持ち主ではない私には味の違いがさっぱり分かりません。ですがただひとつ、からくてとてもおいしかったとおもいます。

2024年、私の戦績はいまだ4戦0勝。
地獄を見たのは翌日でした。

辛辛魚の辛さは、乳製品によるバフをあっけなく貫通していたのです。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する