自主企画イベントに向けて書き下ろしてみた作品。企画内容としては「小説の書き出しだけが読みたい」というものなので、冒頭60字縛りで一区切りつけた即興作品になる。
ただただ愚直に書き出しだけで滑り出したものの、60字という短さを痛感するばかり。他の人の作品を見てみるとセリフが案外入っていたりして、感情移入しやすさに驚いた。
思えば、自分の作品はセリフが少ないものが多い。主人公の主観で展開する一人称視点の作品ばかりなものだから登場人物がそこまで喋らない感が否めない。
その場の風景や雰囲気を書き出していくよりも、セリフを出した方が読み手側としては状況を把握しやすいのでは?と思い始めた。むしろ自分の作風がくどいような気さえしてきた。
もし、あの白夜の吸血鬼の続きを書くとしたら最初のセリフに至るまでどのくらい文量を必要とするのだろう。
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がらんどうのその場に差し込む日差しは、そのステンドグラスを通して眩くも殺風景を彩る。物思いに耽る時間も惜しみ、男は早急に踵を返した。
眉をひそめる。まるで澄み渡った水に一滴の泥水が垂らされたかのような不快感を露に、教会の戸、出口を前にし、ふと振り返る。
再び崩れた十字架が少し離れた先で目に留まる。
「恩師よ、貴様の答えがこれなのか?」
男以外、誰の耳にも届かない、その声が礼拝堂に響き渡る。
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まだ物語が始まっているような気がしない。
読み手には何処まで話が伝わっているのだろう。
作者の脳内の設定もまだ浮き彫りになっていない。
もしこのまま物語を展開させていくとしたら、この男が元吸血鬼であることを明かす話に持っていく必要があるし、何の因果で吸血鬼にとって居ていいような場所ではない教会に居たのか説明しなければならない。
冒頭60字というのもやはりなかなか難しい。というか、100字でもかなり厳しい。そこをどうにかしていくのがある種、作家に求められる技量なんだろうけれど。
もっとラフに、ラフに。厨二病の抜けたシリアスさ皆無のギャグ路線か何か、突っ走ってみるべきなんだろうか。