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街角での一コマ

 今日仕事帰りにスーパーで買い物をして出ようとしたら、近くの入り口の段差に躓いて転んでしまった人がいました。四十代ぐらいの女性です。近くに高校生の女の子がいて、そのお母さんのようでした。

 上手く受け身も取れないような転び方で心配だったのですが、お母さんは顔を上げるなり高校生の娘さんに向かって「誕生日なのにごめんねー」と申し訳なさそうに言いました。お母さんの近くに持ち手のついた箱が落ちていて、どうやらその箱にケーキが入っていて転んだ際に潰すかなにかしてしまったようです。娘さんの誕生日ケーキを。

 転び方からして、かなり痛かったはずです。だけどお母さんはすぐに自分よりもケーキと娘さんの心配をしました。何度も何度も「ごめんねー」と繰り返します。娘さんは周りに心配になった人たちが集まってきてしまって恥ずかしいのか、「何してんのー?」とちょっと怒ったような口調でお母さんに言っていました。

 この街の人は根が優しい人が多いので、「大丈夫ですか?」と代わる代わる声をかけていきましたが、お母さんはまだ地面にお尻をついたままコクンと頷いて、ただただケーキを台無しにして申し訳ないような表情でした。

 その光景を見て、僕は少し切ない気持ちになりました。

 娘さんはちょっと怒ったような感じでしたが、それはケーキがだめになったからではなく、お母さんが転んでしまって心配だったことに対する反応のように思えます。

 ケーキなんかよりも、まず自分の心配をしてほしい、と。

 子供って親が思っているよりも、親のこと心配しているんですよ。まあ僕がそうなので。恥ずかしくて伝えられないことも多いけれど。

 どうか今日見たお母さんと娘さん親子に、幸あってほしいと思いました。



 と、小説に関係ない話でしたが、今一つ書いているものがあるので数日後にまたご報告します。

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