六月。
和久田家に転がり込んできたのは、他のパルタイから命を狙われていると言うパルタイの一・ガドリン。彼は誕生以来変わらず昏睡状態にあるパルタイ・ジーボーグを引き連れていた。
正体不明の襲撃を受けて事態を察した和久田は、パルタイを敵視する武藤には事実を隠匿しながら、襲い来る謎の力に対して共同戦線を張ることを決めるが、彼らの前に《パルタイ》と《ザイン》を纏う者、《ビオス》と《黒兎》に次ぐ第五の怪人が現れた。
ガドリンもろとも不能者ジーボーグの抹殺を企てる第五の怪人、その名も《ウンボイダー》。その存在、すなわち「パルタイを殲滅せんとする人間」の存在を知った武藤は、《ウンボイダー》との共闘を選ぶ。そのとき和久田は…………
燎原、燎原の火、草を焼く橙の火、熱波が舐める、舐めるとそばから草は乾き、萎れて、乾ききったところで燃え盛る。芝は燃えている。ある、熱波が。熱波、の中心にいる影、煙にまかれる黒い影が中央にぽつりとひとつ、煤けた贋金の色と塵埃を超越した青を纏ってひとり、影を中心に広がる乾いた熱波が燎原を成して草を燃やしている。薄汚い金色の小人が地から空を睨んでいる。そこに怪物があった。翼に無数の光、玉石と天球の光、ひこばえに金星が降りてきて、光る、光る――
『善美、あるいは美しい人』。