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  • エッセイ・ノンフィクション

「18.Innocent white」のノート


桜や梅、椿に百日紅、木槿、芙蓉、金木犀。

花が美しい樹木はたくさんある。

一方で、種子や葉、あるいは樹形で馴染みのある樹木も多い。

楢、椎、橅、銀杏、松、杉、欅。

しかし、実ができる以上は花も咲く。ただ、花が目立たない。

小さく地味だったり、見ても花と気付かなかったりするからだ。

ドングリ系や銀杏、欅の花は前者で、松や杉は後者だろう。


ところで、見れば印象が強く忘れがたいのに「目立たない」花もある。

それは、高い樹木の上で大きな葉に隠れ、真上に向けて咲くからだ。

僕が前から知ってる例ではユリノキがある。

葉の形が半天に似ているのでハンテンボクとも呼ばれる。

街路樹によく使われているので、知らずに目にしていることが多い木だ。

この木の花は蓮のように真上に向かい、こぢんまりと咲く。

花に比べて葉は大きめで枝につく枚数も多いので、下から見上げただけでは花が目立たない。

それだけに、旬の頃にその黄色の花を見つければ、頭上でこんなに綺麗にとしばし見入る。


このユリノキの上をいくのが今回知った朴の花だった。

とても大きく料理にも使われるほど親しみのある葉に比べ、花はぴんと来ない。

ところが、その姿のなんと大きく美しいことか。

特に、開く直前の、包葉(蕾を包む鞘)が割れて花弁が覗いた様(さま)には凛とした静謐さがある。


朴はユリノキよりも背が高いので、普通はこの花に気づけないだろう。

この時は、森林公園で渡った吊り橋の上から、朴を真横に見る機会があったから分かったのだった。


街中に植樹されるものではないから、春にいつでも眺められるわけではない。

しかし、それでも、来年の春にはまた、どこかの頭上にはあの花があると思える気がする。


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Olympus OM-1, Zuiko 50mm 1:1.4, Fujicolor C200, f/3.5, 1/60, -0
Date 2021.5.6 15:40

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