最近ゴジラのCMを度々見て、ふと『ニャジラ』を思い出した。
知っている方もいると思うが、
『 What's Michael? 』(ホワッツ マイケル?)という漫画に出てきた、太った最強の三毛猫である。
三毛なのでもれなく牝猫なのだが、これがまた人間もちょっと引くような貫禄ぶりとふてぶてしさ。
推測する体重およそ15キロ。
もう普通の日本猫の3,4匹分。猫界の*ノロイである。
(*ノロイ 『ガンバの冒険』に出てきたラスボスの白いイタチ。普通のイタチの3倍近くある。
もうネズミにどころか、人にも脅威になる体長であり、大きさだ)
漫画だから別に気にしなかったがストーリーによって飼い猫だったり野良だったりして、実際にノラ猫だったらあんなに太れないだろうなあと思っていた。
ポッチャリどころか、ニャ・ジラなのだから。
しかしニャジラは実在したのだ。
ただし白猫で、ビルを破壊したり、車を前脚でコロコロ転がしたりはしなかったが。
私が以前務めていた会社の近くに、古びた感じの鳥めし屋があった。
そこには1匹の半野良がよく通って来ていた。
白い毛並みが薄汚れていて、首輪もなく野良ネコだというのはわかるのだが、その体型はまるでアザラシのようだった。
何しろ短毛なのに脚の付け根がめり込んで見えるのだ。
後ろから見ると、そば殻をパンパンに詰め込んだ枕に短い脚と尻尾が生えて、のしのしと歩いているみたいだった。
おかげで顔もムーンフェイスで、いつも眼は細かった。
しかもそこの店は昔ながらの重さで感知する自動ドアだったのに、その猫だけでドアが開いてしまったりする。小さな子供じゃ開かないのに。
おかげで堂々と猫は中に入って行き、パートのおばちゃんに追い出されることもなかった。
後から聞いたら、この店で残り物をあげていたらしい。
食べ物屋なのに、表から堂々と入れてるのはどうなのかとも思うところもあるが、まあここの客にも容認されていた地域猫なようで、5軒ほど先の会社の玄関横にその猫用の段ボール箱があった。(蓋を閉めて犬小屋タイプに、わざわざ猫が通れるだけの穴を開けてある)
そこでも女子社員がカリカリを皿に出していて、後ろで上司らしいおじさんが
「ご飯なんだから、早く出て来なさいよ」と猫に話しかけているのを見かけたことがある。
鳥めし屋のおばちゃんは『これから寒くなるから太らせておかないと』と言って餌を上げていた。
もうまんまアザラシ理論だ。
ある頃から見かけなくなったので昼に店を訪れて訊いてみたら、とうとうお空にいってしまったらしい。
やはり太り過ぎが原因かと思ったのだが、『まあ13年生きたからねえ』とおばちゃんは言った。
猫の寿命は飼い猫と野良ではずい分違うらしいが、半ノラでそれなら、まあ長生きした方かもしれない。
飼い猫として快適なお家には飼われなかったけど、自由気ままに過ごしてご飯を貰える場所はあった。
幸せな一生であったらいいなあと思う。