サクサクと踏みしめていたはずの砂に足を取られる様になったのはいつの頃からだろう。ジリジリと照りつける太陽は、いつの間にか南中に差し掛かろうとしている。夢に視たオアシスは在るのだろうか。暫し此処で休めと誘われて踏み込んだ窪地は蟻地獄で、無邪気に訪問者を飲み込もうとする。畏るることなかれ、ただ流れに身を任せれば良いのだ、と。埋もれゆく最中、表面の熱さと地中の冷たさに引きちぎられる。溺れ、藻がく力も尽きた頃、それまで様子を伺っていたハヤブサが現れた。僅かなキッカケを颯爽と攫い、上空へと連れ去られてゆく。そうすると眼下に見たこともない光景が広がるのだ。それこそが鳥の眼の世界なのだと知った。
【写真】
近鉄奈良〜神戸三宮間で時々見かける列車。
外観:奈良公園界隈
内装:若草山(鹿のオアシス)
『朱鳥の鳴くころ』に登場した電竜のうちの一匹です。
◉朱鳥の鳴くころ
https://kakuyomu.jp/works/16817139556710993716