お久しぶりのノート更新です。
立山三山を登拝していました。
立山といえば、富士山、白山と共に名を連ねる日本三霊山の一つ。
雄山3003m、大汝山3015m、富士ノ折立2999mの三峰を併せて『立山』と言い、浄土山2831m、立山(主峰は雄山)、別山2880mを三世諸仏に見立てて『立山三山』と称するそうです。
『三世諸仏』とは過去、現在、未来(場合によっては、前世、現世、来世)のことで、これが順に浄土山、立山、別山に相当します。いずれの山も周りを360度ぐるりと見渡せるので、確かに『うてな』のようでもありました。
立山信仰は、死者は山に還るという山岳信仰と仏教が密接に結びついていて、とりわけ地獄思想(あらゆる苦痛を具現化し、そこからの救済を考える)が特徴的です。
古くは麓から中語(神と人の仲介者;ガイド)と共に登って擬似的に死を体験し、ようやく一人前といった通過儀礼のような風習もあったようです。爆裂火口の跡地に広がる地獄を巡り、岩石を積み上げたような立山に登ることで極楽浄土を目指し、今生に蘇り地に足を着けます。黄泉還りとも言えそうです。
火山ガスが音を立てて吹き出す地獄谷を背に、みくりが池(御厨;神に供える酒食を用意する台所)を起点として、過去から未来へ、立山三山をのんびりゆるりと一周巡ってきました。高山植物の開花期ど真ん中で、山肌や岩の隙間に生える植物たちは大層色づいていました。
日本で3000mを超える山に登ったのは、これが初めてです。
特別天然記念物の雷鳥の親子にも逢えたし、雨に打たれたり風に煽られたり眺望が晴れたりと目まぐるしく移り変わる山の諸行無常にも触れられたし、色々と洗い流された山行きでした。
ちなみに三霊山のうち、白山は二度登拝していますが、富士山は様々な角度で眺めるための『不二の山』だと思っているので登る予定はなく、実はまだ一度もくっきりとした山容を肉眼で拝んだことがありません。
sea to summitへ至る急峻な地形と、徹底して砂防と水利に向き合わざるを得なかった歴史。富山訪問は初めてですが、下山後、周辺の博物館や街の図書館で資料を読み漁ったりもして、この地の解像度が少し増したようです。
ジオロジー的な魅力もあって、街を眺めると建築家やランドスケープデザイナーが注目している土地なんだろうなと感じられました。
くそう。なんでこんな面白い土地のことを今まで何にも知らなかったんだ……!
火山帯ゆえ温泉を抱える山小屋もあり、下山しても街には山ほど銭湯があります。おかげさまで存分に楽しむことができました。
山行きと温泉は一連のものですからね。
友香さんの温泉エッセイで予習しておいて良かったです。
下山後立ち寄ったお風呂の洗い場は三つの区画があり、第一洗場は洗浄散弾が放物線を描く戦場と化しておりましたので、静かに通過して第三洗場へ向かいました。(オリジナルバージョンの第12浴・参照)
◉温泉施設のキミョーな来訪客(作者:黒須友香さん)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890021719【写真】(画質をシュルレアリスム加工済)
ちょうど現在と未来の間くらいで休憩している私のくっく(登山靴)と、はじまりの地であるみくりが池を中心とした地獄界隈、そして山のすぐ向こうに富山の街並み。右手奥には富山湾が広がっています。【2022年・山の日】
長くなりました。ここまでお付き合いくださり有難うございます。
では。