先だって那覇空港の待合ロビーに座っていると
俺の隣に、それはもう綺麗な、長身の若い女性が座ってきた
黒木メイサ系というのか
その彼女、右脇にボストンバッグを置き、そこに右肘を付いて少々、斜に構えながら
スラっとした長い足を組み、遠くを見つめている
真横に向いてガン見していた訳ではないが、そのような体勢であることは推察できた
黒のスーツを着込み、真っ白なブラウスが映える・・・モデルさんだろうか?
まあ、そんな女性が隣に座っているのだから嫌な気はしない
そのうち彼女は寝落ちしたようだ
スースー寝息が聞こえてきた
チラッと右を見る
片肘を突いたボストンバッグが沈み、さらに深く右に体が曲がったまま、少し伏目がちに、気持ち良さげに寝てらっしゃる
そんな彼女の就寝を邪魔しないよう、俺は静かにスマホを見ていた
そのうち隣から
「ニャ・・・」
「ニャゥ・・・」
「ニャニャ・・・」
猫のような声が聞こえてきた
チラッと彼女を見る
「ニャ・・・ニャ・・・」
「ニャゥゥ・・・」
寝息ではない、寝言だな完全に。
憑依してますか~猫?
綺麗な女性の猫語の寝言・・・と、言葉にすれば色っぽく聞こえるかも知れないが
実際、隣にいる俺は少々、不気味だ
沖縄は猫天国だが、人間に姿を変えた猫が飛行機に乗ろうとしてるのだろうか?
そんな馬鹿な発想が浮かんでくる
この娘、人間だよな・・・
今度はチラッとではなく、少しの間その寝顔を見つめてみた
すると突然
「ニャゥゥ・・・ウガッ」
目が覚めた
パチッと開いた瞳が横を向き、俺と目が合ってしまった
俺は慌てて目を逸らし、顔を正面に向ける
「ふふ」
彼女の微かな笑い声
そのうちまた、スースーと寝息が聞こえ始めたが
再び猫語に戻ることはなかった
俺は搭乗時間が近づいてきたため静かに席を立ったが
彼女はよほど疲れていたのか、先程よりも深く体を沈め、眠っている
彼女は本当に猫だったのかも知れない。