今年の回顧録、といっても戦線離脱していたのですが。
出戻りの不束者ながら、読者の皆様のご厚情に与り感謝に堪えません。
半年前には、既にカクヨムを退会しておりました。今年の目標は、総文字数10万字と意気込んでいたのですが不甲斐ない限りです。結局、作品としては長編『白魚舟を漕ぐ』、短編集『氷見清之介の肖像』、年末の新作に短篇を1本という結果となりました。実は二次創作の原稿を数万字書いたので、かろうじて目標は達成したと言えるでしょうか。根性も意気地もなく、小説書きとしては半端な結果になりました。
言い訳ながら、今年の夏以降は持病で体調を崩していた影響も否めません。
ただ、小説を書くことで持ち直すことができた面もありました。
僭越ながら、今年の作品をご紹介できれば幸いです。
今年の作品と言っても、私自身は半年間のブランクを1年間のようにも感じているのですが。特に、『白魚舟を漕ぐ』は、昨年に完結させたような錯覚を覚えています。各作品のそれぞれに、作者としての苦心と愛着があり、また読者の皆様との良縁を結んでもらった感慨もあります。この場を借りて、ご覧くださる皆様に心より感謝を申し上げます。
作品をお目に留めてくださりまことにありがとうございました。
以下、今年の投稿作品についてを少々。
①長編『白魚舟を漕ぐ』
【
https://kakuyomu.jp/works/16818093087784653803】
12万字程度 BL/耽美調/純文学寄り
着物のリメイク作家と美形モデルのボーイズラブ三部作
「右手を握り、浮舟を舫うように指を絡めて繋ぐ。躊躇いがちに、痙攣した指先を掴めば骨張った関節に触れた。素肌のまま、寒気に晒された手指は氷よりも冷たい。陸に水揚げされ、凍えた白魚のような指は手弱女とは違う。骨の髄まで、痺れるほどに凍てついた男の指。その硬ささえ、硬質な骨の感触さえも愛おしいと思えた。」
②短編集『氷見清之介の肖像』
【
https://kakuyomu.jp/works/16818093087785206716】
3万5千字程度 短編集/人間ドラマ/純文学寄り
『白魚舟を漕ぐ』のスピンオフ。主人公「氷見清之介」の近縁男性の話。
「清之介の、蓮葉な断言ぶりに呆気にとられた。晶之輔を、不思議そうに小首を傾げて見仰いでいる。その瞳が、水晶の象嵌のように透徹であった。小粒の水晶か、氷塊を研磨したような澄んだ双眸に怖気を覚える。晶之輔は、清之介と名付けたことに憂慮を抱き始めていた。」
③試読版『玉紫』
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https://kakuyomu.jp/works/16818093089068929492】
1万8千字 書籍風/書簡・日記体小説/架空の同人誌設定
耽美作家と大学の先輩のブロマンス以上ボーイズラブ未満の小説作品
「藤尾の尊厳を、私の小説が蹂躙すると胸中では気付いていた。彼の恩義に悖るとの心地がなかったわけではない。藤尾の教示は、私の骨髄に鑿で刻まれた鏤刻であった。彼の精神に執筆という行為を持って微瑕を鏤める。それこそが、私の生涯に君臨した紫星への至誠だと思った。」
以上、今年に手掛けた拙作の紹介でした。
読者の皆様にご高覧いただく機会を賜り幸甚の至りです。
ご清覧くださりありがとうございます。本年も大変お世話になりました。
2024.12.26 蘆蕭雪