…俺ってどうよ?
ふつうに、新婚だよな?
たぶん、新婚だよな?
…滅多にない残業に追われてる。
「なんで、こんな日にミスしたのよ?」
「すいません」
ってひたすら謝ってる。俺のおかげでサンタ役のイケメン先輩やダーリンと高級店を予約したのー♪とか言ってたのに。
申し訳ない。ちなみに鈴木兄妹には関係ないプロジェクトだったから、帰宅済み。
子リスみたいな課長は妻を心配していたけど、イケカマ係長がペットの様子が心配だから、と先に返して、当たり前だが柴原も赤ちゃんのために帰宅した。
苦笑いしながら、明日菜に伝えてくれるらしい。
こればかりは俺のミスだけど、上司にフォローしてもらわないと解決できないもどかしさと。
なにもこんな日に。
「すいません」
落ち込んでる俺に、相変わらずイケメン先輩は、
「まあ、めずらしいし、いままでが逆にできがよすぎたんだ。気にしないで。データー確認を見落とした僕の責任でもある」
って優しいけど、
「ほんとうに、よりによってなんで今日なのよ?頭までクラッカー鳴らさないでよね?新婚すぎで、いまでもウェディングベルなんじゃない?」
イケカマ係長は、ハイペースにキーボード叩きながら、俺をにらんでる。
「キャンセル料は、ランチでしばらく返しなさいよ?あんた最近、愛妻弁当なんだし、たまにはランチ奢りなさい」
「いいなあ、愛妻弁当。僕も真央に作るかな」
「蓮、それは愛夫弁当でしょう。真央って以外に料理できるわよね?」
「意外じゃないでしょ?柴原だって和菓子屋さんの娘だから、小さな頃から職人さんたちに料理の基礎的なの教えてもらってたみたいですよ?」
おかげで、披露宴で散々な目にあったぞ?
あの恨みって、絶対的に、
「ん?なんだ?わからないの?」
目の前にいる穏やかゴリラのせいだよな?
たぶん、柴原の怒りをかうから、俺にしたんだろ?面識はあるし。
そりゃ柴原と仲良いのは俺だし。
俺は柴原の金魚のふんだけどさ?わりと金魚のふんて短いぞ?
って思いながら、ため息がでる。
「先輩だってサンタなのに」
「やたらサンタにこだわってるけど、あんたまさか奥さんへの渡すプレゼントで頭いっぱいでミスしたわけじゃないでしょうね?」
「さすが、課長。よくわかってますね?」
俺は素直に言った。相変わらず俺のお口はアイスクリームみたいに、軽くて滑らかだ。
「だってほら?なんか明日菜と過ごすクリスマスって予想つかないというか、明日菜がいた世界ってたぶんお洒落で賑やかだっただろうし?」
「コロナ禍だったでしょう?むしろ質素じゃないの?」
「そりゃあ、まあ、その期間はそうですけど。社会人なって、少しはなんかこう、なんていうか」
「恋人らしい束縛してみたい?」
って、イケメン先輩が言って、
「あっ、それだ!」
って、俺はやっとわかった。最近のモヤモヤに。