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ここ最近読んでた本についてのメモ、あと凹んだりへばったり。

ここのところ「体調悪くて更新できませんでした」とグダグダ言い訳をするをために近況ノートを更新しがちになっているピクルズジンジャーです、おはようございます。

そういうわけでして、この土日は休めない用事でへばったり、フォローとリムーブはご自由にって言ってる癖にTwitterで相互になっていた方のフォローが外れていて「え、どうしよう、私この方の気に障ること言ってしまったかな? うるさかったかな? どうしようどうしようあわわわわ……」と泡食ったあげくに凹んだり、SNSのフォローリムーブごときでダメージくらう中高生なみのメンタル弱々なみにさらに凹んだり、凹んだり凹んだり凹んだり、睡眠不足でものが考えられなかったりでとにかくぐったりしておりました。
なぜにこんなに体力不足なのか、そして凹んだメンタルはなぜもとにもどらないのか、以前は体の丈夫さだけが取り柄だった将棋の駒でいうと歩のような奴だったのに……これでは歩以下ではないかと思考が下向きに行くような週末を過ごしていたたため書くことは休んで本を読んで過ごすことに。

(積読やら図書館で借りた本が溜まっているので、ブックマークしているカクヨムの小説が中々読めず心苦しいことしきりですがお許しください)

読んでいたのは『沼の王の娘』(カレン・ディオンヌ、林啓恵訳)という、アメリカ産サスペンス小説です。凶悪犯に誘拐されて強姦された少女を母親にもつ娘が刑務所から脱獄した父親から夫と娘を護るために立ち上がるというストーリー。
昔から拉致監禁がかかわる凶悪犯罪に関する話が怖ろしく、それゆえに却って興味を引き立てられるものがあって読んでみた小説になります。面白かったけど、メンタルが凹んでる時によむようなものじゃあないな、と。あとなんとなく藤野可織の『ファイナル・ガール』を思い出したりした。

以下、ここしばらく読んでいた本を最近から先月へさかのぼる形でつらつらとメモ代わりに。

・『異世界最強トラック召喚 いすゞエルフ』(八薙玉造)
コミュ障で陰キャで天涯孤独な女子高生が異世界に召喚されたら、ものすごくレアな能力を付与されました。それはいすゞのトラックを召喚する能力でした。こんなのやだよー、と恥ずかしく思う主人公ですがその世界でトラック召喚することは非常に稀少で最強といってもよい能力なのでした。そして勇者をやってるその国の王女様となんだかんだで仲良くなったりしました……という出オチ巻の強いライトノベル。出オチだなぁ……と思うがポンコツぎみな二人の女の子が仲良くやってる様子を眺めてほっこりする小説としてなら楽しい。あと、いすゞのトラックに対して詳しくなれる。どうでもいいけど最近気になって買うラノベはダッシュエックス文庫なことが多いけどなんでなんだか? 本読み自認があるならガガガ読んだ方がいいんじゃないのか?

・『キングとジョーカー』(ピーター・ディキンスン、斎藤数衛訳)
現実とは違う系統を持つ1970年代の英国王室、とある日の朝食中にお盆の中がハムがヒキガエルにすり替えられていた所からジョーカーなるものの悪戯が始まる。それは段々悪質化してゆきついには殺人まで起きる。
また、十三歳の王女ルイーズはヒキガエル事件がおきた朝食に自分の両親である国王と王妃、そして国王の美人秘書の間にある秘密があることに感づく。それは一体なんなのか、数世代にわたって王家の赤ん坊たちの面倒をみてきた育児係で現在は寝たきりのミス・ダードンに話を聞くのだった。
あとで述べるブックガイドに紹介されていたのに興味をもって読んだ小説。皮肉の聞いた言い回しやユーモア、凝った舞台設定に合わせた小道具、どことなく上品で色事と秘め事横たわる王家が舞台という小粋さからミステリーというよりいかにもイギリス! な、小説を読んだなという印象。主人公のルイーズもいいが、ミス・ダードンがよい。こういう人がいてこそのイギリスの小説! とでもいいますか。そこまでイギリスの文芸作品に精通してませんが。

・『ピネベルク、明日はどうする?』(ハンス・ファラダ、赤坂桃子訳)
ワイマール憲法末期の大失業時代に恋人の子羊ちゃんを妊娠させてしまった簿記係の青年・ピネベルク。二人は結婚を決めるが、子羊ちゃんの実家はしがない労働者で娘の稼ぎを家計にいれることでなんとか立ち行くような経済状況、ピネベルクは身持ちが悪く欲深いため折り合いが悪い母親しか身内がいない。そしてピネベルクの勤め先は結構なブラック。インフレに薄給、クソな同僚、不便な下宿、節約しても節約してもなんやかんやとでてゆくお金、たまらぬ貯金、どちらも親からの経済支援がない状態で赤ちゃんを産み新しく楽しい家庭を築くことができるのか? という、雑なあらすじを書いているだけでも胃がズドーンとしてくるような小説。
労働者階級でも読めるようにという意図があったらしく、会話が多めで平易でユーモラスでするすると読める小説であるが、書かれてることは大変つらい。おもしろいけど辛い。平成末期の日本の状態と余裕で置き換え可能で辛い。赤ちゃんがいる新婚家庭の愛だなんだではどうしようもない現実の様子なんてそろそろ百年経つだろうになんでこんな変わってないんだよって感じで辛い、作中ではナチズム吹き荒れる直前で、本作に登場する裕福なユダヤ人も数年後……と思うと辛い。辛いけど面白い。
エピソードで、ピネベルク母の愛人が世間では悪女といわれるようなパートナーを思って口にする台詞にちょっと泣かされる。

・『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』(オリヴィエ・ベーブ 高橋啓訳)
アウシュヴィッツに非道な人体実験を行い、「選別」を行い、戦後はアルゼンチンに逃れて南米各地を転々としながらブラジルの海で最期を迎えたヨーゼフ・メンゲレの逃亡を詳細な資料を駆使し小説仕立てで語るノンフィクション・ノベル。
この人にはずっと興味があったので読んだわけですが、現実はフィクションほどドラマチックなことはないのだなという読後感になるのは、対象に感情移入するのを防ぐかのように「あてのない逃亡生活で神経をすり減らしエリート意識と猜疑心が強いおっさん」として当該人物を書くそっけない筆致によるものか。メンゲレがモサドの追跡から逃げきったのは、中東との関係悪化でナチスの戦犯逮捕より優先すべきことができたからというのがにんともかんとも、というか。アルゼンチンで一緒になったアイヒマンが、戦後にナチ系雑誌者が「六万人虐殺された」というホロコースト生還者からの証言を「いくらなんでもそんなことあるわけないだろ」という点から否定させようともちかけたインタビューでおもいっきりそれを肯定したという件が印象深い。

・『ガルヴェイアスの犬』(ジョゼ・ルイス・ペイショット、木下道穂訳)
ポルトガルの田舎にある村・ガルヴェイアスに宇宙からやってきた何かが衝突する。その日から村には硫黄の匂いがたちこめ、パンはどうしても酸っぱくなってしまう。異変にとまどう村人たちだが、そのうち慣れて普段通りの日常を送り出す。そのことをいつまでも覚えていたのは村にいる犬たちだけだった……。
というようなあらすじから何かしら超自然的なことがおきる小説なのかなと期待して読むものの、村に住む老若男女の様々な生き方生きざまにスポットを当てた連作短編形式の小説だった。全部読むとガルヴェイアスという小さな村全体の人間関係や歴史、近場の都会からブラジルにアフリカといった世界とつながりあっている様子が分かる。
ラストは大混乱を意図しているようにみえるが、訳者解説によるとそうではないらしい。

・『ぼくは本当にいるのさ』(少年アヤ)
もともとwebで発表されていた文章のファンだった少年アヤちゃんの新作。
セクシャリティ、家族の問題、世界と折り合いが上手く着けられないことを独特の言葉遣いや時々笑ってしまうような言語感覚でしっくり表現されるテクニックに魅せられるのだが、大好きで大事なおもちゃを二束三文で売り払うような自傷行為めいた箇所が続くので大丈夫かなと読んでいて心配になってしまい、ラストで安堵する。
SNSの最近の投稿では彼氏さんと仲良くされているようで一ファンとしてほっとしている。
セーラームーンをはじめとする女児系おもちゃやファンシーグッズに関する文章も素敵なのでそろそろ本にまとめてもらいたいものです。

・『優雅な読書が最高の復讐である』(山崎まどか)
山崎まどかさんの読書エッセイ、コラムなどを一冊にまとめたもの。ブックガイドとして楽しむ。先に挙げた『キングとジョーカー』を読んでみたのはこの本で面白そうに紹介されていたから。
それにしても邦訳されていない小説が面白そうでつらい……。ニューヨークの高級アパートメントで暮らす才色兼備の六人姉妹(実態はとにかくグズグズ)の小説とか大変面白そうなんですが、誰か訳してください。

・『90年代サブカルの呪い』(ロマン優光)
『危ない一号』、ドラッグに死体写真、エロやグロ、ロフトプラスワン、根本敬など、鬼畜で悪趣味だったが故に今現在「鬼畜系」として雑に語られ勝ちな90年代サブカルの一分野をその当時のカルチャーの受け手だった著者が検証しつつ語るという本。
もともと著者のコラムが好きだったので、ここ数年文章がまとめられて本になるのが嬉しい。でも、この本に関しては著者も受け手だったがゆえに言葉がいささか重たいなという印象になる。
良識をわきまえ危険との戯れ方を知っていた層が始めたブームが広がりつづけるうちに、当事者が思っていた形とは違う受け取り方をされてしまい、ただ表層をなぞっただけのどうしようもない表現が増えたりするというのがいつの時代もどんなジャンルでもあるあるであるよな……というがっくりする現実が書かれているというかなんというか。
あとまあ、今となってはどうしてあのころ危ないものと戯れることがカッコよいとされていたのかと、ひと昔まえのことを振り返ってしまう。
メンヘラの章はどうしても数年前のオタキング愛人騒動を思い出してしまい、辛くなる。

・『コードネーム・ヴェリティ』
 『ローズ・アンダーファイア』 (エリザベス・ウェイン、吉澤康子訳)
第二次世界大戦の英国を中心にパイロットとして戦争の裏側で働いていた十代少女たちを主人公にしたアメリカ産YAシリーズの二冊。ヤングパイロットシリーズうらしい。
『コードネーム・ヴェリティ』は1943年にちょっとしたミスを見とがめられてたドイツ軍に逮捕された少女が、自分の持っている情報を手記にまとめるように命じられる。少女はそれを自分の親友の視点による小説として語りだしたのがそれはなぜか……? という謎を、その手記と囚われた少女を案じる親友の物語の二部構成で語る小説。
『ローズ・アンダーファイア』は1944年に英国の補助飛行部隊に参加していたアメリカ人パイロットの少女がある作戦中にドイツ軍にとらわれ、スパイ容疑でラーフェンスブリュック女子強制収容所へと送られてしまい、そこでの地獄のような生活や家族のような仲になったポーランド人少女やロシア人パイロットの少女たちとどのように生き延びたかを戦後に手記の形でつづる冒険小説。
どちらも大変面白い。単品として読んでも楽しめると思うが、前後につながりがあるので二冊読んだ方がお得感がある。絶対損はしない。つうか、女子と女子の物語が好きな人は二冊とも読んでとにかく読んでと勧めまくりたい小説。
第二次大戦中の物語故に目を覆いたくなるような箇所が頻出するが、それはそれとして自分の好きなものがこれでもかこれでもかと詰まっていたので満足度が非常に高い。「私が好きなのはこういうの!」と全世界に向けて無駄に叫びまくりたいところがある。
『コードネーム・ヴェリティ』なんて女子ふたりもののお手本のようでたまらんが、どちらかというと『ローズ・アンダーファイア』が好みのど真ん中を突いてますね。辛い箇所も多いんですが、そういうところも大事なんです。
それにしても二作に共通して登場するある人物が悲惨すぎるので幸せになってほしいんですが、むずかしかろうなぁ。ていうか、早く三作目も訳して。


――以上、三月から四月二十三日までの間に読んだ本になります。
しばらくPCに向き合っていなかったので、文章を書く感覚を思い出そうとして読書メモでも披露してみる気になったのですが、思いの他長くなっていた。
とりあえず、最後に紹介した二冊だけでも読んでいただきたい。面白いから……。

2件のコメント

  • 『コードネーム・ヴェリティ』と、『ローズ・アンダーファイア』についてのレビューうれしいです。ピクルズさんの前の近況ノートで見かけて、気になっていたので。すぐに読めないのが残念ですが、リーディングリストに入れてます。

    「少年アヤ」さんのWeb記事もちょろっと読みました。この感性の鋭さで生きていくのはご苦労も多かろうと思いつつ、惹きつけられるものがあるなぁ。

    それにしても多読でいらっしゃいますね! どうやってアンテナ張っておられるんでしょう。
  • 西フロイデ様

    エリザベス・ウェインのこのシリーズは本当に良かったです。
    単に好みだったというのもありますが、読みごたえも十分ありました。もう一度お勧めしておきますね~。

    アヤちゃんさんは本当に繊細すぎて、自分のような雑な感受性の人間が読むとヒヤヒヤさせられもするのですがその分自分では気づかなかったことを代わりに言葉にしてくれる手腕がすごいというか、本当に文才が半端ない方で腰をぬかしそうになっています。
    数年前にSNSで注目されていた時にはお笑い系のコラムも書かれていたのですが、その時のレトリックや言い回しが冴えに冴えていて憧れていました。
    おすすめは最近文庫になった『焦心日記』ですね、すごい本なのでこちらもまたよろしければ……。

    そういえば広く浅く色々と読んではいますね……。
    アンテナはやっぱりTwitterフル活用といったところでしょうか。好きな作家さん、ライターさん、書評家さん、出版社さんのアカウントをフォローするとなにかしら面白い本の情報が入ってくるので、気になったものをチェックしております。
    ただ、出版社さんのアカウントをフォローするbotのような売り出し中の本の宣伝RTでTLが埋まるのが悩みの種です……。
    あとは新聞や雑誌の書評欄をチェックするなどしております。

    しかしそうやって築き上げた積読の山を見上げて悩むのもまた自分だったりします。
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