私はこんな時代になっても、人に読ませぬ初稿だけは鉛筆で綴ることにしている。けれど別段、テキストエディタにキーボードではゆきづまるとか、そういったことはない──ひとりの小説家が独白…

魔女に憧れていたわたしは、「ぬぅん」と鳴く奇妙な黒猫を飼い始めた。どうにもこう、優雅さに欠ける上にちっとも思い通りにはならない猫だったが、わたしは彼女を連れて三日月の夜の魔女集会…

後ろで一つにくくられた真っ黒の髪、特徴のないメガネ、休み時間はいつも読書。いつもちょっと俯きがちな神崎さんだけど、クラスのみんなは彼女のこと、陰で「覇者」って呼んでる。あのオーラ…

もう生きているのが嫌だと思って、とにかく山奥へ向かった。電車に乗って、周りの景色が森みたいな無人駅で降りて、ふらふらと彷徨い歩いた。 そこで私は、なんかとても西洋風なエルフ達に…

本棚と壁の間のところに、細い扉が現れる。毎晩だ。父さんも母さんもこのことは知らない。これから、中を確かめる。 （KAC2022　お題：真夜中）

行きつけの画材屋が休業中で、ぽっかり予定が空いてしまった「わたし」。 いつもは行かない路地裏をぶらぶら歩いていると、「一箱屋」という名の小さな店を見つけた。中に入ると、隅から隅ま…