生きることに疲れてしまった葵が向かった先は奥多摩。だが、そこで出会ったのは、自分達を「ハラットの民」と呼ぶエルフでした。
このエルフ、ファンタジーに出てくる高潔な種族で間違いはないのですが、何より人の話を聞かない所が面白い。奥多摩と言うと「ファールハラットだ!」と怒るくせに「葵です」といくら名乗っても「アスタリエン」としか呼ばないエルフに、葵がどんどんとどうでも良くなってきているのが伝わってきて、もうここだけでも癒やしのパワーが半端ないです。
ツンツンしてるくせに耳を撫でるとトロンとしてしまうし、人間そっちのけでラブコメしてしまうし、可愛いと面白いの絶妙なさじ加減がクセになります。
これはもう、死にたい気持ちも一瞬で吹き飛びますわ。
そんなエルフ達との交流を通じて、最後は明るい道筋も見えたりなんかして。
心が辛くなった時に、何度も読み返してこの世界に浸りたくなるとても素敵な短編です。
ちょっと現代社会に疲れたと思ったら、ぜひ立ち止まってこのお話を読んでみてください。