• 恋愛
  • 現代ファンタジー

あとがき――水底からの目覚め/あの日の約束


https://kakuyomu.jp/works/16818093091332966995


長崎県松浦市にある鷹島(たかしま)の沖には、今から700年以上も昔、元寇で日本に攻めてきた軍船が数百とも、数千とも言われる規模で眠っています。

このお話は、もちろん登場人物も場所も私の中で生まれたフィクションですが、近い将来か遠い将来にそうして沈んだ船のうちの一隻が見つかり、完全に近い形で引き上げられる日が来たら… という思いから生まれたものです。


地中海では、ギリシア時代やローマ時代の船が

北欧では、ヴァイキング時代の船が

カリブ海では、大航海時代やそれに続く時代の船が


今でも時々見つかって、歴史好きな人たちの心を揺さぶっています。
遺跡や遺物は過去からの贈り物ですが、風を受けて、海原を疾走する船には特にロマンを感じられるのかも知れません。


このお話の主人公である鷹野明日菜は、歴史好きという、同年代の子たちから見ればちょっと変わった「好き」の持ち主でした。

明日菜にとって幸運だったのは、同じ「好き」を共有できる仲閒――同級生の島岡萌絵――がすぐ近くにいたことです。二人は小さな部活の小さな部室で、夢中になって自分の「好き」をぶつけ合うことができました。

二人の共有した幸せな時間と、大切な記憶

大人になってそれぞれが別々の道を歩み、日々を生きていく中でも、明日菜は消えることのない「好きなもの」への熱を持ち続けていました。そしてその熱を、お互いに確認したことは一度もなかったけれど、萌絵も静かに持ち続けていました。


「静かに情熱を持ち続ける大人の女性ふたり」というモチーフは、「空へ その向こう側へ」でも描きました。こういう関係性、私はとても好きなのだと思います。

明日菜と萌絵は、このお話の後はきっと、毎日の仕事でヘトヘトになりながら、時には自分の中の熱と相手の中の熱の温度差に戸惑いながら、それぞれの形で「好き」に向き合っていくことになるでしょう。

高校時代のように純粋に、好きなことだけを思って行動する贅沢は許されないとしても、ふたりで交わした約束と、12年の時を経てそれが叶った喜びは、明日菜と萌絵の情熱をこれからも支えていくに違いありません。


2025.1.6 黒川亜季
(in 魔法のiらんど 2021.3.26)

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する