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レビュー企画、選定作品発表です。

遅くなりましたが、Twitterのレビュー書きます企画にて、選定作を発表致します。こちらの4作品となります!!\\\\٩( 'ω' )و ////

※近況ノート投稿時点では、作品ページでレビュー投稿はまだしていません。1月30日朝に、順次行わせて頂きます。
※選定基準は過去の近況ノート( https://kakuyomu.jp/users/TKNG_GMR/news/16817330652339775794 )を参照下さいませ。



選定作品①
『その想いは未来を灯す埋み火のように』
作者 長久
https://kakuyomu.jp/works/16817330648659758716

【レビュー】
『スポーツ医療』と『陸上競技』を組み合わせた人間ドラマ×ファンタジー小説。この並びから教本的な内容と身構えてしまいますが、読み始めると分かりやすく情報整頓されていて、web向けに仕上がっています。

 陸上に情熱を燃やす女子高生の楓が、些細な事から脳梗塞を引き起こしてしまい、生き甲斐を奪われて絶望——そして、『奇人』と呼ばれる理学療法士との出会いと再起を描くストーリーライン。スロースターターにじっくり四話まで使い、五話からグイッと物語が加速していく。序盤の構成が巧みで、目が離せなる事でしょう。

小説の題材に専門医療が絡むと、どうしても没入するまでが難しいもの。しかし、こちらはライト文芸を意識した文章作りをされていて、作品世界にすんなり浸れる。リハビリ・部活動の状況説明も過不足なくプロットも書籍作品レベルのお手並みでお見事です。

完成された作品ではあるものの、ネット小説の分野でトレンドになり得るか、拡散力のある新鮮さがあるかという点では難しい所ですが、文章力はどのレーベルでも勝負出来る地力があります。


選定作品②
『カイイユウギ』
作者 Haganed
https://kakuyomu.jp/works/16817139558869780597

【レビュー】
『遊び』というキーワードを頭に入れて読み始めると、硬質な情報量の地の文に誰もが面を食らう事でしょう。しかし、高密度でも読み進めてしまう。想像力が掻き立てられる。それも背後に控えるホラーの力あってこそだと、次第に『恐怖』という感覚によって気付かされます。

怪異と遊戯の普遍的な組み合わせの中身は、主人公康平と怪異との戦いを描く物語の数々。落ち着いた日常で引っ張りつつ、じわり……じわり……とした怖さで読者を追い詰めていく没入感があります。テーマがすんなり肌に馴染む所が魅力ではあるのですが、長編ホラー作品として見ると、追う側は後半息切れしてしまう印象がありました。しかし、『怪しさは自然に溶け込む程——怖いのだ』というメッセージでゾッとさせる所はさせてくる力量がある事は、間違いありません。

文章だけでも十分読み応えがあるのですが、試しに小説読み上げツールを用いた所、とても耳に残る作品へと昇華しました。つまり、怪談話としても完成されているという事です。

音声化という展望は、作者様の執筆意図に無いかもしれませんが、オーディオブックが普及していく昨今で、ネットホラー小説の新しい可能性を耳から指まで堪能出来る点において、推したくなる作品でした。


選定作品③
『無欲のクリスと不思議な貯金箱』
作者 小日向ななつ
https://kakuyomu.jp/works/16817330650210402158

【レビュー】
ファンタジー世界に存在する魔術学園で、ヒロインがブタの貯金箱になってしまうという導入。読み手の生活圏において、身近で想像が安易な舞台装置ですがこのシンプルさこそ、今のネット小説に求められる『牽引力』ではないでしょうか。

元に戻る為、課外授業という流れでクリスとリリアはルミナスコインを集める旅に出るという、ロードムービーテイストの物語です。仲良い女子同士ってこんな感じだよなぁ〜と、親近感が沸くほどのやり取りで物語が進み、スラスラ読み進められる。キャラクター造形におけるリアリティと需要のバランスがよく出来ている点は、作者様の強みと言えます。

期限に追われながら、コイン集めをするダブルヒロインは旅の中で出会いと別れを経験します。程よいボリュームの章分けで読みやすく、空き時間を使って読むのにピッタリな作品でした。ライトノベルらしく分かりやすい作品ではある一方、目新しさや独自性のインパクトが少々弱い点が勿体無い所。ですが、文章力と登場人物の作り方に安定感があるので、今後の作品でも期待が持てる作者様でした。完結を楽しみにしております。


選定作品④
『夢見し蝶の遺言』
作者 かやま
https://kakuyomu.jp/works/16817330649733540114

【レビュー】
褒め言葉の間に縫い付けられる『死にたい』から始まる純文学短編。生と死を儚き虫に喩えつつ、死にたがりの少女と生き急ぐ男の物語が綴られていく、読後感の良い作品です。

ネット小説が普及する昨今『死生観』をテーマに扱う作品は、注目されつつあります。その中で『夢見し蝶の遺言』は、繰り返し読み返すのに適している印象を受けました。純文学は読み手と書き手の感性を研ぎ澄ます分野である為、自由に発信する事が可能な舞台では見逃されがちな傾向があります。しかしこちらは、丁寧なリータビリティで台詞と地の文のバランスが程良く、万人向けに相応しい作りでした。だから当方は三回も読み返したのでしょう。

カクヨムの性質上、読者を限定してしまうという点と、どの層の目にも触れる機会はあるので難解漢字のルビ振りは一考するべき課題がありますが、web短編小説のエンタメとして、純文学はこうで在るべきだろうと思わせる力作です。



【選評】
当ツイートに寄せられた計41作品の中からレビュー選定となったのは合計4作となりましたが、一次突破した13作品はどれも勝るとも劣らない出来で、正直全部にレビューを入れてあげたいくらい、作の質と完成度に差が無いのです。

ですが、競合(コンテスト)とは『限られた椅子の奪い合いであり、開催者の型にハマるか否か』である事を忘れない為に、選定基準を定めた上で、悩みに悩んで……展望があるかどうかという目線で、作品を選ばせて頂きました。

選定基準が変われば上がる作品は当然変わるので、おめでとうございますやら頑張って下さいという言葉は添えませんし、当方の感想や選定結果はアテにしないで欲しいと言わざるを得ません。

全体的に作品を見た感想ですが、カクヨムコンの求めるものに合ってるかと言うと、うーん……他の賞の方が良さそうな印象が殆どだったり、エンタメ重視の枠なのに作家性が強いかも……という疑問を抱いたのは本音です。

好きな事を伸び伸び書いてらっしゃるのに興醒めしてしまう事をあえて述べますが、先に言いました通り公募というのは編集部が求めるものを提示できて、且つ現代の商品にする素材として相応しいかどうかを品定めする場所。カクヨムコンに参加する以上、避けては通れない道になってきます。


今回は参加レーベルがたくさんある事もあり、ワンチャン感があるお祭り騒ぎなコンテストではありますが、ネットという分野において『話題性で売れる・旋風を巻き起こす』ポテンシャルがあるかどうかという点で、最もシビアな畑かつ狭き門だと個人的に思っています。その分、誰にでも挑戦資格があって、読者との出会いや作品を作るきっかけになるのは良い点である事は確か。皆様カクヨムを上手く活用されていて、見習わなきゃいけないと思わせられました。



自分は未デビューの公募勢ではありますが、選ばれる事も難しいけど選ぶ方も難しいという事を味わう良い機会となりました。やはりどちらの目線も理解するというのは、どの場面においても大事な事ですね。

この場をお借りしまして、カクヨムコン8に参加する皆様にとって、良い転機が訪れる機会になります事をお祈り致します!

2件のコメント

  • 篤永さん、お疲れ様でした!
    こっそり楽しみにしておりましたが、選考基準になるほどなぁと思いました|ω・)

    一つ目だけは途中まで拝読しておりますが、レビュー内容にも納得です。すごく描写と筆力が高いですよね!
    他の作品もレビューを拝読して、読んでみたくなりました( *´艸`)

    自分はカクヨムコンのエンタメ部門は、なんとなくWEB小説らしいと言うよりも、野生時代のような書籍らしい本をまとめている印象を受けました。ただ、蓋を開けて見ないことには、分かりませんね;;

    審査員の好みが反映されるのは賞の常でもありますが、なんにせよ、カクヨムコンをきっかけに多くの方が良い機会に恵まれると良いですよね(*´∀`)

    素敵な企画をありがとうございました!
    本当にお疲れ様でした!
  • ユト様
    コメントありがとうございます!いえいえ、最新話まで楽しませて頂いたんですけどユト様の作品も良かったんですよ!!ミステリー枠があれば、レビュー書いてる出来栄えでした!自分が言っても説得力が無いのですが、選考を突破するラインに到達していると思います。

    公募との両立は大変ですが、レビュー企画はまたやりたいなと思います。
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