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「ぐうたら剣姫行」終結した後の解説(296~298話)

第二の最終回と言ってもいい第296話「カルナリアの結婚」、その後の「新王朝略史」「カラントつれづれ」を投稿いたしました。

「カルナリアの結婚」で、この物語を閉じても何の問題もないと正直思っていました。
最初に構想したこの物語、最初に組んだプロットver01では、この終わり方だったのです。「おひめさまとおひめさまはずっとしあわせにくらしました。」という……。

ですがここまで積み重ねたたくさんのもの、後に出てくるだろうとほのめかしたもの、物語として決着のついていないキャラクターたち……。

そして、大国の君主であるカルナリアとただの風来坊(カラント王国では)であるフィンとが、ずっと同じままでいられるのかという重大な疑問も湧いてしまって。
カルナリア自身が抱いた夢、「あのひとと手をつないでどこまでもずっと旅を……」というものは達成されないまま終わるのか、しかしそれを達成するにはカルナリアが自ら背負うと決めたものを放り出すことになる……と、そりゃ人の夢がすべてかなうなんてあるわけないよなという、寂しく切ない「現実的」な展開になるのが当然だ、そういうものだ年を経るとわかるそうなるしかないんだよ……とするのか。

そのあたりのモヤモヤした思いが、「二人は再会し、結ばれて、これからもずっと幸せに」……で終わってくれない、その後の展開を書かせました。


その、「その後」……296話から298話にかけてのあれこれをこちらで色々と。


・「神殿と神官」

296話の、カルナリアの成人式で「最高神官」という存在が出てきましたが。
この物語の世界では、「本当に神々に拝謁してきて恩寵をいただく」国王や「神の力を行使できる魔導師」がいる以上、教えを説くだけの神官にはそれほどの権威がありません。
神を讃える美麗な言い回しを工夫したり、様々な儀式を担当することで荘厳さを増すような、そういうところで存在をアピールするしかなくて、なんとか権力者の庇護や民衆の信心を得て存続しているのがこの時代の神殿、神官のあり方です。
そのあり方が変わるのは、「本当に神の世界へ行く」魔法具が完全に失われて、誰も本当の神のことがわからなくなってから、「神とはこういうものだ」ということをまことしやかに語り大勢に信じさせることができる人物が現れたときでしょう。



・「技」

成長したカルナリアが、ぐうたら剣士を羽交い締めにして、捕らえました。
これまではとにかくやられ放題、持ち上げられひっくり返され、時には頭をなでられたり甘い言葉をささやかれたりして気が抜けたところで逃げられていたのですが。
全力で修練を重ねた結果、とうとう「最高の技量を持つ者」に密着し逃がさないということに成功しました。
その影には……外伝にできるネタが浮かんだのですが、「長身でよく動ける女性」が、目もくらむ高給を提示されて連れこまれた先にいたのが「猛々しい関節技の鬼」と「どこかで見たような信じられないほどの美少女」で……
その二人が「あの方を押さえこむことを想定してくださいませ」「わかりました!」と意気投合していて
「それならこうして」「こうですか」「それだと逃げられます、重心をこう、ここの上に」と、ひたすら実験台にされ逃げてみてください逃げ損ねたなら処罰しますと言われて必死になったのに猛々しい相手に制圧されてさらに練習相手にされ続けて半死半生……ということに。

「剣豪女王」は、実は「寝業師」「関節技の匠(たくみ)」だった、ということになっていました。技術習得がものすごく速い時期に全力を尽くした結果の高い技量をカルナリアは身につけてしまいました。
したがって今後は、カルナリアを襲った者は「つかみかかったら手首を取られてねじられる」「伸ばした腕の、肘に指をつきこまれ激痛に硬直した瞬間に膝裏を蹴られて倒され制圧される」などの目に遭うこととなるでしょう。
その技量が、その後、どこで誰に対してどのように発揮されることになるのか……。


・苦労

ガルディスという「目に見える、わかりやすい敵」がいてくれた間は楽だったのですが、それがなくなると、これまでの味方もそれぞれの欲望、計算、支持基盤からの突き上げなどから、自分の利益を求めて激しく動き出します。
地球の歴史上でも、そういう状況に陥らないように「わかりやすい敵」をあえて潰さず残しておく、という戦略を採ることは多々見られます。
カルナリアも、ガルディス陣営を滅ぼすまでは味方していてくれた者たちが自分の利益のために手の平を返しまくる状況に直面して、ある意味で大きな学びを得ました。
対処するために「神眼」で、けっこう強引なやり口を取る人物を採用してしまい、多くの恨みを買うことにもなっています。結果的には「より多くの人が不幸にならない」政体ができたのですが……。

突然登場した「植木職人」オーレル・ジャッカンも、その流れから浮かんできた、「徳川秀忠」をイメージした人物でした。戦国時代の気風を残しまくってる大名たちを容赦なく改易、転封させまくって長期政権の礎を固めた人物。「後の世の、より多くの人が幸福を得られるように」と言われても、今まさに自分が不利益をこうむる、場合によっては完全に破滅するとなる人にとっては何の救いにもならないわけで。
カルナリアもそういう怨念を向けられる側になってしまいました。

自分が選んだ道であるとはいえ……だからこそ、そういうつらさを一時だけでも忘れさせてくれる、自分がどうなろうと支えてくれると信じられる相手が必要だったのに……最も求める相手はきつい時期にそばにいてくれなかったという。
そりゃ全力で捕まえますね。物理的に。
なお「お尻ぺんぺん」は実際に行われた模様。生尻に。女王が新しい世界に目覚めたかどうか、逆襲されてそれはそれで目覚めたか、その辺りは一切不明。



・つれづれ

「巨乳連隊」・・・いや、カルナリアが「公正に」「適切に」「ふさわしい能力を持つ者を」選んだ結果ですよ?
ちなみに見た目だけではない実戦対応能力を持ち合わせています。カルナリアや「庭園」に住みついた者たちが全力で鍛え抜いた結果です。貴族日記で書かれている蜂起、「植木職人ジャッカンと奸臣ノエルを除く」と立ち上がった者たちが片づけられた後になって、まさかもうそんな真似をする者がいないだろうと油断した(ように見えた)ところで挙兵した……バルカニアへ送る交代兵員を引き連れてきた地方領主がそのまま都を攻めたという、ぶっちゃけ「本能寺」パターン。
明智光秀と違ったのは、すべて察知されていたということでした。したがって、ライズもノエルもジャッカンも、カルナリアもみな襲撃に際してきれいに姿を隠して逃げのびました。
地方あがりの野卑な兵たちは、「庭園」に突入して、「巨乳連隊」の女騎士、それも「奇襲のせいで装備が間に合わず肌着姿で現れた」美女たちに目の色を変えて追いかけて、罠にはまり、後ろから攻撃され……それでも追いすがった者は実力を発揮した女騎士たちにやられ、それすらもはねのける真の実力者の前には、「正義の我が棒をくらえ!」と襲いかかってくる理不尽な強さの女戦士、さらにできるだけ楽に相手を殺そうとしてくる影の最強剣士が現れるという、無理ゲーきわまりない展開が待っていました。


・アリアーノ

初台詞がそれか、というアーノ姉様。
推しは体に良いのです。(以前にいただいた感想)
病弱だったのが、推しを見つけて熱狂的にはまることで健康になりました。
ただしその方向性は……ゴーチェが悪いのか、わずかな表現に行間を読みまくって展開させる貴腐人いえ貴婦人たちが悪いのか。
どんな女性でも口説きまくれるノエルが「絢爛党」には距離を置いているのは野生の勘としか。自分を熱く見ているとしても、自分そのものを見ているのか自分と周囲の関係を見ているのか、その見極めが実に正確にできていて、触れてはならないものには触れないですませることができる分別を、グライルが与えてくれていました。
元気にはなってもその元気は政治とか王位とかには一切向かなかったアリアーノは、その後も旺盛に「活動」し続けて、権力とは別なところで「ある種の」文化の偉大な守護者となり、本人が世を去り女帝カルナリアも去った後でも、『その手の趣味者が集う』場所としての「アリアーノ通り」や「アリアーノの界隈」と言われる地域が都会に残り続けることになります。


・種馬

セルイ。

…………大往生、と言うしか。
実は享年三十二。グライルの旅をした時は二十歳でした。ほぼ毎年『愛妻』に子供を生ませ、十一人目を孕ませての臨終。当人的にはこれ以上はない極上の終わり方でした。
ぶっちゃけ、セルイの首を「事前に」斬っていたフィンも、命を吸われまくって痩せ細る姿があまりにあまりなので、何一つ言えずに見すごす以外にない展開でした。
(フィンが行方知れずになった後もさらに生ませそのまま終わるとはさすがの剣聖も予想外)

なお生ませた子供たちとその子孫は、カルナリア女王のカラント王国において大いに働いてくれました。
子供十一人、孫四十五人ぐらい(本当に孫か不明な者が何人も)、その次の世代は百人以上。
詳しくは、本編終了後に投稿する補遺集において。



他にも補完があった方がいいなと思いついたらまた別途この近況ノートにて追加します。

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