第217話「変貌」を投稿いたしました。
「装着の儀」を終えて『|王の《カランティス・》|冠《ファーラ》』の色を変えたレイマール太陽王。
カルナリアはなぜかこの兄に対して異常な警戒心を抱きます。実際それまでと違い、明らかに何かに覚醒していますがそれが何かがわかりません。
そのレイマールが、フィンをたやすく見つけてしまいました。
とはいえこのぐうたら剣士、姿を現してからここまで数話にわたって危機的状況にもかかわらずレイマールに対してものすごくゴネて、セルイたちがものすごく怖がっているのも含めて場の中心のように振る舞いましたが……。
実は館の裏口から侵入してきた後は、出てきて、カルナリアの隣に移動しただけ。そこから一歩も動いていません。
カルナリアが別れを告げたあとにいなくなったようでしたが、実は装着の儀やカルナリアの様子がよく見える場所へちょっと移動しただけでした。
殺気を飛ばしたり王子を愚弄して殺されかけたり色々やっていますが、動作としてはほとんど何もしていません。映像にしたらぼろ布の円錐形が立ったまま。そういうところこそがぐうたら剣士たる所以というものです。
そしてそのフィンも、川べりで存在に気づいていた首輪の中に隠されていたもの、『王の冠』。
これはカラント国内で最大の魔力を有する魔法具であり、その効力もとてつもないものです。
まず、装着するとその人物の能力を示す色にまばゆく輝き、その後光量は落ちつき色合いは固定されます。
外すと光は消え金属板の地金が見えるようになりますが、再び装着するとまた色がつきます。もっともまばゆく輝くのは初装着の時だけで、二度目以降は地味に色が変わるだけです。城門をくぐる際に衛兵に厳しくチェックされても、そこでおぼえてもらえれば次回以降は顔パスかごく簡易なチェックだけですむ、それと同じようなものです。あるいはネットでの個人認証。初回だけパスワード設定やら何やら色々要求されますが、二度目以降は記録されているのであっさり。
装着者が死亡した場合も色は消えます。
王家の秘宝ということで王族しか装着を許されないということにされていますが、実はそんなことはありません。誰でもつけられます。
適当な誰かにつけさせ輝かせた後、またレイマールがつけると、初装着という扱いになりまばゆく輝きます。「カラントに帰国してからあらためてみなに知らしめる」と言っているのはそれを知っているからです。小姓の少年ジルあたりにこっそり装着させ認証を変更しておいてから、沢山の人を集めてあらためて「装着の儀」を行い輝きを見せつけるつもりでいます。
装着すると能力が大きく伸び体も健康になります。
その伸びたものや体の健康さは、外しても失われることはありません。突然有能な家庭教師を複数つけられ猛勉強させられて名門校に合格したとして、その後に退学したとしても身についた学力が完全になくなるわけではないのと同じことです。もっともその後は年齢と環境相応に衰えてゆきますので維持するなら努力が必要でしょう。
なお、初装着時には強制的に神の世界に引きこまれ「今度の王はどんなやつだ」と神々と対面し挨拶させられますので、能力アップした者を沢山そろえたいととっかえひっかえ装着させるような真似をしたら、延々と対面の場に立ち会わされる神の側が怒ります。
カラント王国初代黄金王がまだ自分の勢力が小さい頃にそれをやって厳重警告を受けました。そのことは代々伝えられ、短期間で三人以上連続して装着することは禁忌とされています。
後の時代に双子の王子が同時に即位し毎月ごとに交替で装着するという「二重王」事例も起きましたが、五回目で片方が神の世界から戻ってこなくなりカラントを大災害が襲ったことで、やはり禁忌とされています。
これまでの経験則で、一月に二人までならおとがめなし、それ以上になるとどこでどの神が怒るかわからないのでやめておくべきという線引きになっています。
レイマールはこの後カラントに戻ってある程度勢力を回復してからあらためてと考えていますので、この禁忌には引っかからないと計算しています。
装着した後の能力変化については、この後の話数で色々出てきますのでここではまだ触れないでおきます。