• 異世界ファンタジー

「ぐうたら剣姫行」206話

第206話「爆弾投下」を投稿いたしました。

新しいグライルの民を組織するために、障害となりそうなゾルカンたちを排除しようと決断しかけていたレイマール。それを止めるために、言葉だけではあるけれど斬り合いも同然のやりとりの末、ごくわずかな生存の道をつかんだカルナリア…………ですが。

まあ色々、間違えてしまっています。

まず解説。本文中でも言及していますが、レイマールがゾルカンに感謝していることと、ゾルカンを排除しようとすることは矛盾しません。宴席で「みんないつもありがとう! 今日は無礼講だ!」と社長が言ったとしても、上司に殴りかかったり警察沙汰になるような大暴れをしたらさすがに処罰されるのと同じことです。むしろ「無礼講だということにしてあげたのに」面子を潰されたということで、より当人の怒りを買う結果になるでしょう。

そして爆弾を投げこんでしまったカルナリア。
自分が考えつくかぎり、できるかぎりのことをした上で全部だめで、こうするしかないと思いこんで最大の秘密を対価にゾルカンたちの命をかかえこみましたが……。
実はそんな真似をせず、ほっぺたぷくーの延長で、ただひたすらに「だめです! だめですから! ひどいことしちゃだめ! そういうのいやです!」と感情むき出しで言い続け泣きわめいて場の空気をひどいものにして、あきれたゾルカンに「わかった、わかったから落ちつけ嬢ちゃん。はぁ、しゃあねえなあ」と暴れることを撤回させていれば、レイマールは見逃してくれた可能性がありました。
王宮を逃れた直後、第一話から十一話ぐらいまでのカルナリアならそうすることもできたでしょうが……。
油断したので目の前で人が死んだ、命を救うために言葉の限りを尽くしなお通じなかった、自分の行動の結果他人が腕を失うようなことになってしまった、人を救うために三発ぶん殴られた、力を尽くしても救えない相手が出てしまったのを横から助けてもらった……などの過酷な経験を積みすぎた今のカルナリアには、子供らしい何も考えない感情だけの振る舞いができなくなってしまっていました。
カルナリア視点なので引っかかることなく表現されていますが、大人たちのやりとりに「死に物狂いで頭を回転させ様々なことを思い出し検討して」提案する、というのがもう十二歳の子供の振る舞いではないのです。
そしてついに、いけないと感覚が教えているのにそれを理性でねじ伏せて、「あれ」を差し出してしまいました。
これもまた、なまじ代価にできるものを持っていたがゆえの、仕方のない失策です。
この回で、フィンにも言われた、人の命を救おうと背伸びしすぎているという部分がどうしようもなく出てしまいました。それを責めることは誰にもできません。

やったことは「持ってきたもののことをレイマールに伝えた」というだけですが、それにより無数の人の運命が激変することになりました。カルナリアが避けようとした大勢の死がもたらされ、想像している以上の人数の、集団の、国そのものの未来が変化しました。
「ここにございます」という、歴史的には巨大なターニングポイントたる一言。
その結果がどうなるかは……この先の展開をお待ちください。



また完全に場違いかつ普通の人であるために今話では存在感ゼロのゴーチェですが、彼が悪人もしくは失言魔で、必要だったとはいえゾルカンはカルナリアをぶん殴ったことがあると告げていたら、その場でゾルカンもドランも問答無用で首をはねられていたでしょう。
カルナリアから言い出すことは決してありませんが、その意味ではゴーチェも巨大な爆弾です。そしてもうすぐ炸裂します。

そして……ネタバレ空白。





















この時フィンは、直線距離ではかなり近いところにいたのですが、この会議の場に乱入できるとまではいかない場所にいました。実は前話でカルナリアが脱がされかけた時にも、飛びこむことができない状況にあり、本当にカルナリアが危うい瞬間でした。

もしカルナリアを脱がせたネルギンが、トニアがいるにも関わらず無視してカルナリアの大事な部分をいじるような真似をしていたら、このあとフィンが姿を見せた次の瞬間にネルギンの全身が切り刻まれていたことでしょう。サイコロステーキ状態。一応はレンカがやったように見せかけるでしょうが。

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