あけましておめでとうございます。
第167話を先ほど投稿いたしました。
難所を必死に登りきった人間たち。しかしそれでよし、みんな生き残ってよかったとならない悲しさ。
それはともあれ、カルナリア視点の本編では語られないことの解説です。
大騒ぎの中、フィンが何をやっていたか。
前話で、シーロを助けようと神速の抜き打ちで球体を切断したのですがなまじ鋭利に斬りすぎたので球体が保たれたままになってしまい、助けることができませんでした。シーロの体をくっつけたあたりだけを切っても、勢いのまま空中に飛び出していったでしょうから結果は同じです。レンカも嘆いた通り「斬るのではなくて止めるのでなければ」で、さしものフィンにもその力はありませんでした。
そして失敗してしまったことから、ほぼ八つ当たりで、斜面を駆け下りみんなを助けに向かいました。『流星』使いまくりです。
カルナリアが見ていないことは確実なので、フィンは一切遠慮なくやりました。寄ってきていた魔獣もすごい数で、大型猛禽×4、小型猛禽多数、大型肉食獣×2、中型×10以上、巨大ムカデ×1、ほか小さいもの多数。助けていなかったら案内人たちの大半がやられていたでしょう。なお斜面下で待機中だった牛獣人たちは逃げて無事です。
もっとも、まだ九十九折りの途中にいたファラ以外の者には、フィンが何をしたのかはよくわかっていません。赤い光の尾を引いて軽々と動き回るぼろ布、人に食らいつく寸前でなぜか動きを止める魔獣、少し後でその巨体のあちこちが欠損してゆく謎の現象が起きているというだけ。
ちなみに「ファラ、よくやった!」「いいぞ!」などと叫んでもいるので、みな『聖女』ファラ様が何らかの魔法で助けて下さっていると思ってしまっています。
それやこれやで変なテンションになったファラが言う「あんなの見てきてなんてギリアちゃんごめん」は、第79話参照。
そして……ネタバレ空白。
ずっと後で明らかになる、アリタ夫婦をサポートするフィンという謎行動の理由、その一環の「それではどうしようもない」がここで。
シーロはもう死んでいたので、薬が本物だったとしても表現は変わらないのですが……もしシーロの息がまだあったら、余計に悲しいことになっていたでしょう。
ちなみに、フィンは持っている剣およびその先にいる神と同様、「斬る、殺すことしかできない」身です。ファラのような治癒魔法かそれに類した真似をする力は持ち合わせていません。
そういう自分をしっかりわかっていますので、何の力もないのに身を張って人を救い、生かそうとし続けるカルナリアをまぶしく感じ、愛おしく見つめています。