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三幕八場 の一例を乗せてみる

 現在連載中の探偵事務所の陰陽師様のプロット。
 三幕八場というハリウッドの脚本にも用いられる手法だそうです。このプロットに従ってスチームパンクモノのプロットも一本立てています。



一幕
一場:状況説明
 高校をいじめが原因で(正確にはその報復)中退した主人公・橘川頼人はバイト先でもクレームにきつく言い返し首となり、長らく家賃を払えていなかったせいでアパートも追い出されスマホも止められる。そんな中自分よりも困窮していそうな少女に、頼人は静かに施し(一万円)を与え、去っていく。
 どん底の失意の中、彼は白髪の美男子が配るビラに八十神怪異探偵事務所所員募集の文字を見つけ、先方から突如かかってきた文字化けした電話に驚きつつ出ると、空間転移され事務所に移される。
 彼はそこがこの世界の反転世界ともいうべき幽世であること、妖怪や怪異、穢れなどが存在することを知らされ、そして自分が橘氏の血を引く貴族——陰陽師の末裔であることを聞く。
 頼人は兎にも角にも生きていくため、そこで働くことを所長の八十神麗蘭に告げ、入社を決意する。

二場:目的の設定
 翌朝出勤してきた所員と顔を合わせ早速初仕事(見学)に望む頼人。その仕事で頼人は霊力を解放して穢れを攻撃するという才能を見せつける。
 ある場所の磁場観測機器の様子がおかしいと所員の心音に言われ、頼人はその様子を単独、確認しにいく。するとそこには小規模ながら穢れが溜まっており、霊力スマホに竜胆から「穢れの元をたどってそれを札で浄化してほしい」と頼まれる。頼人は言われた通りにするが、つけられていたことに気づいていなかった。奥に行くと、小さな祠があり、これが穢れの元だと断定する。
 背後から声をかけてきたのは高校時代頼人をいじめていた男たち。彼らはバットを手に頼人に襲い掛かり、殴りかかってくる。なんとかかわして反撃するが、穢れに当てられ凶暴化した同級生は止まらず、とうとう頼人をぶん殴る。金属バットで頭を殴られた頼人は昏倒し、祠に倒れかかってその血を受け皿のような台座に注ぐ。
 そのとき祠からドス黒い霊力が吹き出し、同級生たちは怯えて闘争する。その主——髪鬼は頼人が自分を解放してくれたことを知り、そして死にかけている今慈悲で楽にしてやろうとするが、霊力に弾かれ失敗。そこに懐かしさを感じ、同時に太古の陰陽師がかけた呪いで自分が式神に落とされたことを知る。髪鬼は仕方なく頼人を助けることにし、霊力で傷を治癒させるのだった。

二幕
三場:一番低い障害
 数時間後、すっかり暗くなった頃頼人は目を覚ます。そこには見知らぬ美女——髪鬼もおり、事情を聞く。互いに自己紹介をしたあとで、頼人は髪鬼は種類の名前であって、本当の名前じゃないといい、九葉という名を与える。髪鬼は気に入ったのかどうか、九葉という名を受け入れ、腹が減った、と口にする。頼人のスマホが鳴り出ると、心配した様子の麗蘭が事情を聞いてきた。全てのあらましを話した彼はひとまず戻って来させるといい、転移術で事務所に戻る。
 麗蘭と九葉の話から九葉が千年前に獄門され祀られた獄門妖怪の一体であること、古代の陰陽師は彼らが甦ることを予期して封印を解いたものの善意を信じ式神化する術式を組んだことを明らかにし、頼人が太古の獄門妖怪の主人ということになってしまう。
 何はなくとも食事をとって一晩休むことになり、菘が作ったカレーライスを食べて眠りにつく。しかし式神ということで遠く離れられない九葉は頼人と同じ部屋で眠ることになり、堂々と全裸で眠る。色気よりも呆れが勝り、頼人はそのまま眠ってしまう。
 翌朝、獄門妖怪を支配下に置いたという情報が早速座卓に入り、座卓から監査官が来る。監査官の男は麗蘭の元契約主で、頼人の術師としての資質をあげて九葉が力を取り戻していくまでに支配力を上げようと一つの依頼を持ってくる。
 それは箱辺山の山麓に存在する火車川に出る、妖怪火車の退治。頼人と髪鬼、ルネ、監査官の狭山亮一の四人でそれを実行することとなり、現地に向かう。
 あくまで試験対象は頼人と髪鬼であるため、ルネと亮一は雑魚穢物の対処に奔走し、頼人と髪鬼の九葉は火車と戦う。ここにくる連中は死を望むゆえ、魂を集めやすいと言って襲いかかってくる火車の車輪に髪を絡ませて止め、頼人のエーテルショットで祓い切る。残った巨大な車輪はどろりと溶け、落ちてきていくのだった。


四場:二番目に低い障害
 火車討伐から一週間。頼人を殴った同級生三人組・岡田、伊藤、飛田が逮捕される。その関係で取り調べの一環で警察に向かうことになったら頼人は九葉、付き添いのルネと共に警察署に向かい、妖怪のことを隠しつつ奇跡的に無事だった、と言い訳する。少年三人の供述では頭がつぶれたとのことだった、というそれに対し、錯乱してたのでは? で誤魔化しきり、頼人たちは警察を後にする。
 このせいで障害致傷は成り立たず、彼らは釈放されるだろうとルネは言い、頼人はもやもやしたものを感じつつ街に繰り出す。
 そのとき立ち寄ったバーガーショップで明らかに浮浪者と思しき少女がおり、彼女は困ったように佇んでいた。彼女は以前頼人が施していた子で、あのときビラを受け取らねば自分がああなっていたかもと思い、ハンバーガーのセットを奢って、一緒に食べる。家まで送り届けようとするが彼女は自分で帰れると言い放ち、ごちそうさま、と言って去っていく。以前も家がある、みたいな口ぶりだったが、どんな暮らしをしているのか——それが妙に不思議だった(現世に甦って長く、妖気が薄くなっているため誰も妖怪だと気づかなかった)
 その少女——牛鬼はその夜ゴミを漁っていると、警察から解放された岡田、伊藤、飛田に捕まる。そして牛鬼は消えないために岡田を主人と定め、式神となってしまうのだった——。


五場:状況の再整備
 就職から一ヶ月後。初任給が入り、手取りで二一万五六〇〇も貰えた頼人は狂喜乱舞する。その様子を見て「昇給制度もあるから頑張ってね」という麗蘭。そんな中、彼女の弟妹である麗奈と澪桜が訪ねてくる。二人はこの街でライブをする関係でやってきたといい、麗蘭たちにも見にきて欲しいという。ニュースにもなっていないのにゲリラライブだろうかと思っていたら、そのライブ会場とはこの反転世界であり、妖怪向けのライブであるという。
 その一方で頼人たちは現世の方でも観光にいく。街はクリスマスシーズンであり、一ヶ月前には考えられなかった幸せな生活を楽しむのだった。

六場:一番高い障害
 牛鬼を手に入れ悪事を働く岡田たちは、とうとう反転世界の存在を牛鬼から聞き出す。その移動方法を牛鬼から聞き出すため酷い拷問を行い(牛鬼は封印された際の記憶から人間を恐怖していたため抵抗できなかった)、頼人が蘇った際の雰囲気や感覚からやつもこのような存在を持っていると実感し、動物的な直感で報復を企てる。
 その頃反転世界=幽世ではライブの準備が進んでいた。頼人たちもステージ設営に駆り出され、一汗かいていた。
 そしていよいよライブ前日、空に亀裂が走る。

三幕
七場:真のクライマックス
 牛鬼と共に幽世の壁を突破してきた岡田。頼人たちは溢れ出す無数の怨念が穢物化していくのを見て、総動員で戦う。
 幽世の奇妙な浮島やなんかの構造物を転々としながら激闘を繰り広げ、敵があの時バーガーショップで出会った少女だと自覚する。頼人は説得を試み、人間を恐怖する牛鬼の心を溶かそうとする。巨大な穢れに飲み込まれた岡田に押し付けられ身動きが取れない頼人と九葉。自由になるのは牛鬼だけ。頼人は彼女に、「俺は、君にまだ人間を魅せていない」と言い、心に火をつける。
 牛鬼は穢れた岡田を攻撃し、拘束を緩めて頼人たちが反撃。剥き出しになった岡田にエーテルショットを打ち込み、トドメを指すのだった。
 主人を失い消えかかる牛鬼だったが、そうはならなかった。異例の事態なのか、太古の術師も想定していたのか、なんと頼人に主人契約が移行していたのである。
 一応の決着を見た頼人の因縁に、幽世はひとまずの平穏を迎えるのだった。

八場:すべての結末
 ライブ当日。「不器用でも私は生きる」を聴きながら、頼人はその通りだと思った。自分の人生を振り返り、真人間ではなかったが、悪党でもない不器用な生き方を振り返り、これからも陰陽師として戦い、救うことを決意するのだった。

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