昨日、この件に関するコメントを書いたが、そのあと気になる記事が出た。読売新聞が報じた890億円の違約金発生の可能性に関する記事で、本ディールが6月までに完了しないと違約金を日本製鉄が支払う「可能性」があるとの記事である。
ディールに期限を設け、不成立の場合違約金が発生する条項を載せる場合があるが、殆どの場合片務ではない。更に例外条項があり、どちらかの政府の認可が下りない場合に当事者のどちらかが一方的に巨額の賠償金を払うなどという条項を残したとしたら、日本製鉄についたローファーム(弁護士)インベストメントバンク(投資銀行)の重大な無能さを晒すことになり、日本製鉄は株式代表訴訟を受けることになる。
あくまで「可能性」だろうから、まさかそんな莫迦な条項を日本製鉄ともあろうものが残すとは思えない(違約金条項はたぶんあるのだろう)が、契約の一部を誤解が生じそうな形でディスクローズすることも、全体を確認することもなく報じることも問題を解決することに何ら資さないし、事情を知らない世間を騒がせるだけの話で、厳に慎むべき話だと思う。
こういう事をしていると報道の真実性に疑問がつく。一旦記事にした以上、契約の全貌を調べるくらいのことを新聞社はする義務がある。貰い情報でお騒がせしたこと(文部科学省事務次官に関する官邸リーク)のある新聞社だけにきちんとしてもらいたいものだ。
追伸:これをアップした後、他社の記事を見たところ、朝日新聞、日経新聞も同じような記事を載せていた。ということはこれは会社発表なのだろう。自らの失策を会社がこの段階で発表するはずはないから、「可能性」という言葉による世論誘導を試みたのかも知れないけど逆効果だと思う。また読売・朝日などはいつまでたってもM&Aに精通しないだろうから会社発表鵜呑みでも仕方ないような気がするが日経はもう少し突っ込むべきだろう。これでは経済紙の意味が無い。
また「中国が笑っている」などという記事が出ているが、トランプの基本政策は関税による経済障壁、物理的壁によるなラテーィノ排除なので、中国鉄鋼メーカーに対する関税(もしかしたら日本メーカーも)に基づくUSSスチール救済がメインになるだろう。ユーザーであるテスラなどの自動車メーカーも短期的に同調し、自動車には更なる関税をかけると言う形がもっともplausibleであり、たぶん中国は笑っていないと思う。
まあ、こういう記事は日本製鉄がUSSを救済できるという希望的観測のもとで欠いているのだろうけど、日本メーカーが海外で救済できたためしは殆ど無い、という実態を踏まえて記事にした方が良い。それどころかホンダによる日産だって危なっかしい限りです。