瓶の中で萎れた金木犀を風にかざした。日はからからと大気をひび割りながらまっすぐ、季節外れの花弁にふれる。
私は規則を守らなかった。美しいうちに腐り果てる花弁の法則から、幾つものみずみずしさを拾い上げてしまった。熟れるでもなく、老いるでもなく、目の前にある金木犀の死を私は拒否したのだ。暇をもて余して瓶を振る。ふと気がついて、鼻を瓶口に近付け、すえた臭いを思い浮かべながらそっと香りを含んだ。
乾いた細胞壁の隙間に、金木犀はたしかに座っていた。
その面影と目が合う。秋の鮮やかさに頭を打ち付け、よろめいて腰をおろした。窓から今も青々しい庭の金木犀が、目を細めて笑っていた。