常夜灯の光の下、ペットボトルの水は少ない光をセッセと集め、自らの影に柔らかな光点を作り出していた。水は、彼、いや彼女は、今や枕元に置かれた飲み水ではなかった。容器に詰められ、循環から断ち切られてもなお自らの生を見いだそうと、必死に光を集めている。
人間が気付いた。ペットボトルを眺めた。その姿に何かを感じかけたが、習慣付けられた人間の指は、脳の判断よりも早く灯りを消した。人間の、何かとてもいい物がそこにあったかのような感傷は、眠りの天幕に覆われ、二度と思い出されることはなかった。
街の灯りがカーテンを透かして青白く、ボンヤリと黒を背景に浮かんでいる。
一つの生が意味もなく現れ、消えた晩。
ペットボトルは水を抱き、静かに朝を待つ。