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日帰りファンタジー「双月の大英雄」を公開しました

表題の通り「“日帰りファンタジー”短編コンテスト」へ、新作「双月の大英雄」で参加しています。

今回はこの「双月の大英雄」について、裏話的なものをしたいと思います。
ネタばれも含みますので、本編未読の方はご注意ください。




















■また武侠なんですか?

逆に訊きましょう――私が武侠以外を書くと思うてかっ!(くわっ)

……いやまあ、武侠以外も書けるようになるべきとは思うのですけども。短期間で書き上げられる題材となると自分にとってはやはり武侠が最も書きやすいので。

最初は「日帰りファンタジーかぁ、一般的なファンタジー世界はネタが思い浮かばないなぁ」などと考えていたのです。
そこから「いやでも江湖だってある意味ファンタジーな異世界であるわけだし……つまり、日帰り武侠!」と閃いてしまいまして。
江湖と現代日本とを行き来する物語として、本作のシナリオを思いついたのです。

■でも武侠用語少ないですね?

今回は「武侠初心者向け」を特に意識して、できるだけ武侠用語を出さないように努めました。
多分、使ったのは「軽功」ぐらいのはず。

「外功」「内功」「点穴」「暗器」は使いませんでした。説明が面倒になる用語たちですからね。

■また女の子を虐めましたね?

……ご、ごめんなさい。
でも信じてください! 私はドSではありません!

ほ、本当ですってばぁ!

■なんで異世界なのに中国っぽいの?

=========> 第二節「やんちゃな女侠客」より
そこは中国在住のころに見た歴史ドラマのような世界で、話す言葉も食べ物も似通っている。唯一の明らかな違いといえば天に二つ並んだ月だ
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本文にこのように記述した通り、こちらの世界とあちらの世界の違いはほとんどありません。
初稿段階ではこれについて説明する場面もあったのですが、字数削減のために割愛することとなってしまいました。

元の原稿では、遁甲金環の来歴について聞かされたルヤンがこのように発言するシーンがありました。

=========>
「神話の時代に、悪神が天地を支える支柱を折った話があるんだ。天は割れ地は避け、女神がそれを修復した時には大地のいくつかは時空の果てに流れて行ってしまったのだと。ただ神仙が有する宝具だけが、それらの失われた大地への旅路を開くことができる――その遁甲金環はその類の品なんだろうね」
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中国神話について詳しい方はお察しかと思いますが、これは共工の反乱と女媧の天地修復の神話が元になっています。
今作ではその天地修復の際に、一部の大地が別世界として隔てられてしまったという設定です。言語や文明の基礎はその時点である程度確立されていたため、こちらとあちらで言葉が通じた、というもの。

さらに言及すると、ルヤンや夏崇烈らの世界には「簡体字」が存在しません。そのため彼らが話す中国語はすべて「繁体字」が使われています。
逆に、主人公は現代の中国(上海)で言葉を学んだため、「簡体字」を使って話しています。
……混同していたわけではないんですよ? 意図して分けていたのです。

漢字を変換しただけなので、そもそもの文法や単語の違いは考慮されていません。
簡体字→繁体字の変換にはこちらのサイトを利用させていただきました。
http://dokochina.com/sim2traconv.php

■映画パロディはいくつ?

タグにも設定していた「映画パロディ」。本作は「異世界人であるヒロインが、こちらの世界の映画で覚えた武術で敵を倒す」というのが物語の基本骨子となっています。
本作に出てきた数々の映画ネタ、さて皆さんはいくつわかりましたか?

さすがに本編中には具体的な名前は出せませんでしたが、ここなら構わないでしょう。
ってなわけで、答え合わせです。

========== 第二節「やんちゃな女侠客」より
「酔っ払いが酒を呑みながら戦ったり、ボールを蹴ったら芝生の大地を根こそぎ吹っ飛ばしたり!」
→「ドランクモンキー 酔拳」と「少林サッカー」

放送されていたのは少年が武術の達人に教えを乞うていじめっ子と勝負する映画、のリメイク。
→「ベスト・キッド」2010年版

武山が好きな「子供が知恵と度胸で大人の悪党を懲らしめる」映画もある。残念、仕事がなければ観たかった。
→「ホーム・アローン」シリーズ

========== 第五節「死ぬのは誰だ?」より
腰を低く落とし体重は不均一に揺らしつつ、盃を掴む手の形を肩の高さへ。
「酔拳だ……」
武山だけが知っている。あれはルヤンが観た映画に使われていた拳法の形。
→再び「ドランクモンキー 酔拳」

ルヤンは答えない。しかし半壊した欄干に手を掛け体を持ち上げる。右脚一本立ちとなり、痛めつけられた左膝を胸の前まで持ち上げる。そして両手は鵬翼のように大きく左右へ。
(中略)
(そういえば、リメイク前のシリーズも観たんだっけ……)
既視感の正体に武山が気づいたのは、すべてが終わってからだ。ルヤンはあの映画も気に入っていた。お陰で窓はピカピカ、部屋の壁は真っ赤に塗り替えられてしまったが。
→「ベスト・キッド」1984年版
==========

多分に私の個人的趣味が反映されていますね。

そして実はもう一つ、タイトルに含まれている「大英雄」も、1993年に公開された香港映画のタイトルが元になっています。
ルヤンが最終節で主人公に言った「誰是大英雄(大英雄は誰だ)」のセリフは、この映画のテーマソングでもあるのです。

■もう一つプロットがあるとか?

あるにはあるのですが、剣侠李白の原稿も進めなければならないので……。
今書いている剣侠李白の原稿が上がったら書こうかな、と思います。

……その原稿は脱稿してもボツになりそうな気配ですけどね(←

剣侠李白の再開はいつになるのか!? 乞うご期待!

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