11月8日午前10時頃の状況
帝国第十一軍の当初の作戦計画では、先鋒のミッドストン旅団はメハン川の線を突破したならば、敵軍が必ず来援するから、これを迎え撃つために、尾根筋の東側、Hex.2325~2925にかけて、塹壕を構築する予定であった。
ミッドストン旅団が作った防衛線の南側を通ってクロスハウゼン旅団が西進、ヘロン市内の帝国第一軍と共同で、ヘロン市東側のケイマン軍を攻撃する形である。
しかし、実際にはケイマン軍はミッドストン旅団に対して前進しなかった。
ミッドストン旅団は街道を利用して尾根の北方に移動する。
ケイマン軍に降伏するためである。
これは帝国軍にとって、そして、ケイマン軍にとっても予定外であった。
ケイマン軍はミッドストン旅団が予定通りの位置で防衛線を構築し、クロスハウゼン旅団を西に行かせた後に、ケイマン第六歩兵師団を前進させ、寝返りしたミッドストン旅団と合同でクロスハウゼン旅団の東側を封鎖する予定であった。
だが、戦闘中の寝返りは不可能と判断したミッドストン伯爵は、早々に寝返りのためケイマン軍と接触する。
交渉に当たった、フロンクハイト枢機卿ウルホ・アハティサーリと第六歩兵師団長はミッドストン伯爵を惨殺。
指揮官の戦死によりミッドストン旅団を潰走させ、その混乱に乗じて帝国軍を分断しようと考えた。
クロスハウゼン旅団はモーラン旅団に舟橋建設を任せてメハン川を渡河。
旅団最先鋒を担うキョウスケとガイラン・トゥルーミシュは予定外のミッドストン旅団の行動に戸惑ったが、これを放置してヘロンに向かうことにする。
ヘロンからはベーグム師団の先鋒が突出。
先頭の部隊はベーグム・レザーワーリ指揮で、騎兵大隊、第一歩兵大隊、第一魔道大隊からの選抜混成部隊である。
ケイマン軍第五歩兵師団所属の第19歩兵連隊は北方に後退。
前後から攻撃を受けると致命的な損害を出しかねないため、これは予定の行動であった。
ケイマン軍が後退したため、帝国軍はあっさりと連絡を確立する。
ベーグム師団第一歩兵連隊の残り二個大隊も先鋒に続いて出撃している。
メハン川渡河点ではモーラン旅団が舟橋の建設を続けている。
レトコウ連隊もクロスハウゼン旅団に続いてメハン川を渡河している。
メハン川渡河点にはタルフォート旅団も到着。
渡河点守備のため半円形の陣地を設営する。
タルフォート旅団に続くカゲサト旅団は行軍が遅れ、旧街道上に伸びきった状態となっている。
これにより、その後ろのクリアワイン旅団も前進できていない。
ケイマン軍で、ヘロン近郊にあるのは第三軍団だけである。
第二軍団は2キロほど北方にあり、第一軍団は更にその北。
第一第二軍団を早期に南下させると、帝国第十一軍が作戦を中止して引き上げる可能性が高いと考えられた。
このため、第十一軍総司令部が充分に進軍したのが確認されるまで動かない予定である。
ケイマン軍首脳は、ミッドストン旅団の協力があれば第三軍団だけで包囲に持ち込めると計算していた。
包囲した後に、第二軍団を投入して殲滅の予定である。