広島行ってまして、でまあ広島行ったからにはいわゆる「広島風」のお好み焼きが食いたいじゃあないですか。広島市内のお好み焼き屋、どこ行っても「広島風」の記載がなく、デフォが肉玉そばなので、なんというか「お好み焼き」という概念が根底から違うなって感じで、だから「広島風」という言い方はおかしいのかもしんないですけど。とにかくお好み焼きが食いたい。
という話で、まあなんか懇親会みたいなのがあって一定量の飲み食いをしたのちに、まだ行くぞッて感じだったので、おおまだ行くのか……と思いつつ行きましたわけです。
で、駅の方うろついてみるわけですが、通常のお好み焼き屋(駅ナカ名店街みたいなの)は閉まってるんです。で、も少し探したら、多分札幌における「味の時計台」的存在なのではなかろかと思うのですが、「広島の風」って店が散在してて、結構遅くまでやってる。まあここでいんじゃあないすかって行ってみたら、結構繁盛してるのと、こちらの人数が多いので結構待つことになると。まあ別にメシは食ってきたし、じゃあ待ちます? って聞いてみたら、ダメだと。ダメかー。って思いながら店探そうと思ったら、もうあそこでいい! って言いながらはなの舞に入ってくわけです。
は、はなの舞……!
あまり飲まない世代の皆さんにはちょっとピンとこないかもしんないですが、ようするに全国チェーンの飲み屋です。もちろん札幌にもあります。旅行先で「ガストで飯食おうぜ!」に近いというか。うまいけどさ。わざわざここまで来て?
でもまあ、すでにほぼ満腹だし、疲れたし、そんな強く言える立場でもなし、まあいっかと思って入って、で入ったら、カープの選手をイメージしたオリジナルカクテルとかあったりして、まあまあ広島感はあるんですよね。一味違うじゃんとか思いながら、さて、って感じでお好み焼きを注文したらですよ。ないって言うんですよ。ない!? 材料切らしてるってことですか?
「そもそもメニューに無いんですよ〜」
そんなことある?
広島で、大衆居酒屋でですよ。お好み焼きがメニューにない!? 何も牡蠣を入れろと言ってるわけじゃあないんです。そんなに難しいことではないでしょうと。
でメニューをつらつら眺めますと、まずチヂミがあるんです。で、焼きそばもあるんですよ。じゃあこの焼きそばにだ、チヂミ的なものを乗せて、そんで焼きそばソースをかければできるじゃんかお好み焼き!! なんでないんだろう、言えば作ってくれるんじゃあないの?
でもね、思ったんですよ。こういうところで、「言って作ってもらう」ってのは難しいと思うんです。たぶんマニュアルとかが決まってると思うんで。
なので、完全に口からでまかせで、こう言ったわけです。
「いややっぱりね、広島の皆さんにとっては、我々の言うところの広島風お好み焼きというのは、一種のなんていうか聖典と言うか、とにかく、容易に触れざるべきものなんじゃあないかと思うんですよ。だってそうでしょ、そりゃあこういう店を経営してる人だってバカじゃないし、現にカープの選手ドリンクとかもあるわけですから、オリジナルメニューだって出せるわけです。粉もんなんて原価率も高くないでしょうから、儲けだって出せる。でもそこで敢えて出さない、ってのが広島人の矜持なんですよきっと。素材がないわけではない。チヂミもあるし、焼きそばもある。そのことはキッチリ示して、でもうちは、お好み焼きに関してはシロウトなんで、シロウトが提供するわけにはいかないんです、ってことをこう、ちゃんと示すみたいな、そのことによって地域に溶け込んで行くみたいな、そういうことなんじゃあないですかね」
なるほど!
ってなって。「そうか、そうだよねえ、広島のお酒とかはあるけど、これは酒屋が作ってるものだから出していいわけだ、でもお好み焼きは各店で調理だから、そこで一定の水準を出せない店は自粛すると、それが地域で生き残って行くコツだと」
「逆に儲け一辺倒で、低水準のお好み焼きを出すと、県民からソッポ向かれてすぐ潰れたりしてね」
みたいに話がどんどん広がってって、もはやこの集団の中では、「他の全てはあるのにお好み焼きだけないはなの舞、アツイ」みたいになってくんですよ。思いましたよね。あーこうやって嘘知識とか陰謀論ってのが生まれていくんだなって。
やっぱ、直接的には示されてないけど、暗に示されたメッセージを解読した、というのには喜びがあるんだなあと思いますよね。だからまあ、近況ノートらしいことを書くと、作品にもそういうのがあるといいのかもしんないっすね。実はこれはこういうことなんだけど、みたいな。そこまで読み込まれることがありうるかは別として。