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嘘つきは泥棒の始まり

 と申しますが、いやそんなこともないっていうか、みなさん嘘を吐くでしょう。そして俺は嘘を嘘と見抜くのが大変下手なのです。
 というのは、それで(どれで?)思い出したんですが、昔。田舎の学校に通っていたので、しばしば謎の虫大発生があったんですね。暑いのに給食時間には窓開けらんないみたいな。

 それで、まあある意味では虫が湧くのは日常だったわけですが、ある時ハエのちっちゃいのが湧いたんです。コバエというのとは違って、ちゃんとしたハエの子供版って言うか、ハエの子供は蛆ですが、そうじゃあなくて、若いハエ。なんか薄茶色い。

 「今日すげーハエ飛んでるなア」と思って、それで若かりし俺は今より活気があったので、このハエどもどっから来てるんだろ、ってふと思ったんですよね。兎の眼を読んだのが多少影響していたかもしらん。

 それでそのハエ源を探索していくと、どう考えてもあるクラスメイトの机に行きあたるんですね。で、俺はその机を探索してみた。

 するとですね。飲み残しの牛乳が机の中に入っててですね。その周りに、ですね…………………………

 うぎゃーーー、ってなって、クラスが騒然となったわけです。

 そんな中、当のクラスメイトはこう言ったわけです。

「あー。せっかく育ててたのに」

 で。
 大騒ぎしていると教師がやってきて、そんで俺は何しろ自分の手柄なわけだから、告げ口をするわけですよ。これはマズいでしょうって。
 そしたら教師が言うわけです。

「そんなに大声で騒がない。それは処分してきなさい」

 まあ尤も、だとは思うんですけども、それで処分しに行かされたの俺なんですよね。まあクラスメイトは『せっかく育てて』たわけだから、その蛆ども(書いちゃった)を捨てるのは自分のペットを殺すようなこと、って思ったような思わなかったような。勢いに流されたような。そこらへん覚えてないんですが、とにかく学校裏手の林のところに軽く穴掘って牛乳パックをビニル袋から取り出して埋めて、で、死ぬほど手を洗っていたら、その時間すでに授業がはじまっていて、教員にちょっと怒られる。「お前何してんだ、もう授業始まってるぞ」的な。それで俺は、いやこれは〇〇先生の指示で、と言うが、まあ当たり前ですけどそんなもなあ信じて貰えませんよね。はよ行け、と言われて、もうちょっと手に残るあのいやあな感じを洗い流したいなあ、と思った記憶があります。

 さて、この話のどこに嘘があるのか?

 俺は全然気づいていなかったんですが、今大人になって振り返るとちょっと思ったことがあるんですね。

 果たして『せっかく育ててた』というのは本当か?
 そして、教員が、毅然として『俺に捨てさせた』というのは、まあこれは本当なんですけど、そこには「うわー触りたくねーなー」という気持ちがなかったか? つかあるだろ。だってなんで俺に処理に行かせるよ。そこにはどう考えても混乱がある。

 だからまあ、もしかしたら彼らは嘘つきだったのかもしれないなあ、って唐突に思ったわけです。32年も生きてるとすれっからしになる。
 でもまあ、何しろ教師は教師だし、つまりバーニイ・ローデンバーのように教師を隠れ蓑にしていない限りは泥棒が本業ということはなかっただろうし、クラスメイトが泥棒になったという噂も聞かない訳です(まあ全然交流がないからもしかしたらなってるかもしれないけど)。だからまあ、これはすごく普通のこと、なんだなあと思う訳ですね。

 もうちょっと書きたいことがあったんですが、消失がいいところなので、一旦ここで失礼します。続くかもしれない。

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