「この動物園ではパンダを導入したとか?」
「一匹一億円とかって聞きますよね。それは市民の税収から賄われているのではないですか?」
「まあまあ落ち着いて。何度も言っているでしょう。皆さんが確実に、『あっパンダ』と言うことをお約束します、と」
「それは答えになっていない!」
「大体こんな寒いところでパンダが健康に育つのか? パンダの幸せを考えたことがあるのか!?」
「おい、それは動物園というものの存在意義の根底にかかわるぞ」
「外敵もいない、エサは3食与えられる、これが幸せでなかったら何が幸せなんだ! 俺だって動物園に住みたいぞ」
「今そこでもめてる場合じゃあないだろう! あ、園長が帰っていく」
「くそー。まずは現物を見るしかないか」
「あっ除幕式がはじまるよ」
だらだらだらだら、だん、と間抜けなドラムロールが流れて、檻を覆っていた幕が落とされる。そこにあったのは、パンダのような大きさで、おそらくパンダくらいの重さがある、こんがりと焼かれた――
「あっ」
「パンだ!」
「言えばいいってもんじゃあねえんだよ」
「嘘さえつかなきゃあそれでオッケーだと思うなよ」
「くそ、園長はどこだ。高飛び? 何がしたかったんだあの人は」