「わが影の吹かれて長き枯野哉」
と、いう漱石の俳句を読んだ。1907年の作。
この句から、なんとはなく幻想と怪奇のかおりがした。影という字のせいかもしれない。
数日後、おなじく漱石に、
「石の山凩に吹かれ裸なり」
と、いう俳句があるのを思いだした。1899年の作だ。
コートを脱がせることができた北風を詠んだようにも思える。
勝手な解釈にすぎないのだけれど、どちらの句も、風の力(パワー)を強調しているのだろう。
一方では、風が人の影を引きのばし、もう一方では山の木々を根こそぎにする。
別にここからなにか教訓を引き出す必要はないのだけれど、できごとを観察してちょっと言葉遊びをしてみる、という余裕がここちよい。