「お陰様で、ようやく文章とメンタルの修正を終え、連載再開にこぎつけました」
「満を持した感を出してるけど、誰もあなたの小説を待ってなんてなかったし、再開の意味すら分からない。こんな形でそれを報告する自己満足の押しつけに、奇異の視線すら向けられているわよ？」
「だとしても、それは仕方がない。これが俺にできる最良の形だと思ってるし、万人の理解を得られないのは、初めから分かっていたことだから」
「もしかしてそれは、開き直り？ 自分のスタイルを押しつけることに、正当性を見出だそうとしているの？」
「そうじゃないよ。世の中には様々な価値があり、色んな形でそれは世界に提供される。俺のスタイルは俺なりに考えたひとつの答えであり、受け手を無視したものじゃない。だけど、だからといって、それが万人に受け入れられる保証にならないのも事実なんだ」
「つまり、あなたは世界にとって必要のない人間だと主張しているのね？」
「なんでそうなる？ いや確かに王道スタイルでないことは認めるよ。正統派小説を書ける自信なんて全くないんだから……」
「でも、なんちゃって小説なら自分にも書ける。もしあなたが、そんな思いで小説を書いてるのだとしたら、それは読み手の時間を無為に搾取する――」
「そんなことはない！ 俺なりに真面目に書いているし、無為な時間を提供するつもりなんてない！ それは断言できる！……ただ、知識量はお粗末なものだし、百回読み返したら百回書き直すくらい、文章は安定していない。そのへんをご理解いただければと……そう思っているだけなんだ」
「自分の力量は棚上げして誠意を見てほしいと？ 呆れた発言ではあるけれど、あなたの年齢を考えれば致し方ないわね。遅咲きブレイクのザコシショウよりも、更にあなたは歳を食っているんだもの」
「うっ……」
「でもあのブレイクは長い下積みと、ブレずにスタイルを貫いた鋼の意思とハートがあってなしえたもの。ちょっと酷評されたくらいで公開を取り止める、あなたのようなチキンハートでは及ぶべくもないわ」
「うぐっ……」
「いいえ、ひとつだけ真似のできることがある。ザコと名乗ることだけは誰はばかることなくあなたにも許されている。その中身を言い当てた、適切で相応しい名でもあるんだから」
「うぐぐっ……そ、そんな私が書いた拙い小説ですが、時間が許す限りお付き合いいただければ幸いです」