或る日、仕事から帰って自宅のドアを開けると、ドアの透き間から細長い紙が飛び出して来ました。
名刺を縦降りにしたサイズの紙。
ケータイの番号らしき数字の羅列が書き連ねてありましたが、心当たりが無いので放ったらかしておきました。
知らぬものは知らぬ。
その内に、見た目は若いけれど、かなり崩れた印象の男性がウチを訪ねて来て、意味不明の事をほざき始めました。
「田村さんですか?」
「違います。××と申します」
「最近引越して来られたんですか?」
「10年以上はここに在住です」
しーん…。
私→「あの、借金の回収とお見受けしましたが、回収できなかった時には、あなたはどうなるんですか?」
この言葉を機に、借金取りはどこかに吹っ飛んでいきました。
田村さんを探しに行ったのでしょうか?見つからなかったら、彼はどうなるのでしょうか?
分りません。
ですが、ただでは済まないのでしょうね?
でもそれは、彼が自分で、それとは知らずに選んだ結果なので、私は関係無い。
だから、忘れます。
でも袖触れ合うのも多生の縁と言う言葉が有る国に生まれた私としては、名も知らぬ彼の姿をかそけきもここに留めておこうかなと思いました。
彼は通り者。
通り者の背には魔が乗っている事が多いので、へー…!?そうなんだ?的に流して下さい。
結構異世界は身近なので、ヘンな話には乗らずに、変わっているねぇ、変だよねぇと、野次馬的に一興を過ごしたら、捨て去りましょう。
人でなしの方が幸せな人生を歩めます。