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桜の森の満開の下

  昼休みはふらふらと、職場近くの書店を徘徊しております。
 ふと、懐かしいタイトルの本を見つけました。
 その上、昔好きだった漫画家さんが表紙イラストを描いている。
 へえ…。と、思ってページを開いたら、ズバリと漫画でした。
 この話って、映像化は向いていないと思うけどなあ。
 前にアニメ化されているのも観たけど、いまいち。
 この話は、文章のカタチを目にしながら、お伽噺のような語り口の、不思議な世界を楽しむのが一等良いような気がします。
 坂口安吾という作家さんはカタカナの使い方が絶妙で、文章芸術の中に視覚という感覚を入れ込んでいて、かなり楽しませてくれます。
 ん―…。でも、今もこの漫画家さん好き♡。それに、この漫画家さんを好きになったきっかけの作品のタイトルは「美しの首」だったし、首つながりで良いかもしれない。
「桜の森の満開の下」という小説は、冷静に読むとかなり陰惨な内容です。
 この話のヒロインは、主人公の山賊に夫を殺されて、そのまま山に攫われていって、夫の敵の妻にされるという、過酷な人生を味わっている、はずなのにも拘わらず、“それならそれ”だとばかりにカチッと切り替えて、最初から我儘を飛ばし放題。さっき旦那さんを殺されたのに?
 主人公の山賊は、あくまでも「賊」なので、誰もが簡単に辿り着けないような深山に居を構えています。
 新しく手に入れた、それも、とびきりの美女を背負って山を登って行くのですが、その時点からすっかりヒロインの支配下です。
 「遅い!」「早くしろ、グズ!」罵声を浴びつつ、ふと立ち止まって「どうだ、この山は全部オレの物だ!すげぇだろう!!」的な事を語りかけてみたりしますが、思いっきりシカトされて、シュンとしながら疲労困憊の体で、我が家に到着します。
 すると、わらわら、わらわら、今まで戦利品として攫ってきた妻たちが家から出て来てお出迎え。

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