• ホラー
  • 異世界ファンタジー

後書き『廃絶すべし、娑輪馗廻(シャリンキエ)』

オカルティック・アクションホラー『廃絶すべし、娑輪馗廻』本編
https://kakuyomu.jp/works/16816700428547589844

 ついにここまで来ました。
 ホラーに挑戦しよう、どうせならもうすぐカクヨムコンが始まるし、長編でいこう! と思い立ったものも「長編ホラーってどう書けばいいんだ……?」と四苦八苦した果ての今作、いかがでしたでしょうか。
 ジャンルを履修するべく、以前から気になっていた心霊ホラーADV『死印』をやったことで、ホラーに対する耐性と消化酵素を獲得し、今があります。
 いやあ、インプットって本当に大事ですね。ホラー知識が増えたことで、以前から知っていたホラーまたはホラーっぽい作品も味が変わったので、面白いものです。

●タイトルについて
 ぶっちゃけ藤田和日郎『双亡亭壊すべし』オマージュです。
 最初の予定では『冥路歴程』と『タマエジキ』どっちにするか悩んでいたのですが、『娑輪馗廻』という特異な音と文字列をどうしても活かしたくて、カタカナ読みと併記することで現在の形に落ち着きました。
 インパクトの面でも、このタイトルで良かったのだと思います。

●キャラクターについて
 道眞は最初はもっと儚くて暗いキャラクターのはずだったのですが、冒頭部を何度もリテイクしていて「百舌鳥にビンタする」という行動を取った時に確変しました。
 ほんと、こう……雪とか桜じゃなくて、闇にさらわれそうな奴にするはずが……。
 それはそうと、葬儀屋キャラが後半あまり活かせなかった気がするので、そこは反省したく思います。没になった怪異ハントでは、葬儀屋知識を活かす予定だったけど。

 百舌鳥はもっとクレバーな刑事! って感じになるよう知性派にしたかったのですが、「酔っ払った勢いでお札を貼りまくったバットに釘を打って『霊魂撲殺一号』と名付ける」という没ネタを思いついた時に、脳筋に転落しました。

 キヨイはキャラ付けに一番難航したかもしれない。名前の由来について、実はもう一段酷いことされていた設定がありましたが、作者の方が胸くその悪さに耐えられなくなってあそこ止まりになりました。成仏してね。

 茅ちゃんは語り手に回るシーンが入ってから、思いついた当初より活き活きしてきて、けっこう自分でも気に入っています。
 本作がホラーでなかったら、たぶん語り手に回ることはなかったし、そこまで掘り下げられないキャラになっていたと思います。
 というのも、メインキャラクターの中で一番超常的な力も、知識ももたない「普通の無力な人」なのが茅ちゃんだったから、その視点は重要だと感じたのでした。

 別天先生は実は黒幕? 実力者? としばらく立ち位置に迷ったキャラクターですが、眼帯をつけることを決めたあたりで現在のポジションに落ち着きました。

 リリンコちゃんはもっと活躍させてあげたかったけれど、紙幅が足りず……多少は猫の気配を感じてください。すいません。


●ストーリーについて
 キャッチコピーにもあるように、本当はもっと早く道眞には動く屍になってもらうつもりだったんですが、第一部の教団パートがどんどん膨らんでしまい、面白いのでそのまま採用したら、中盤の怪異退治パートを切り詰めざるを得なくなりました。
 初期の案だと「心霊治療家の別天と、その助手で動く屍の道眞の元に、不眠症と夢遊病に悩まされる百舌鳥が訪ねてくる」というものだったんですが……。

 これだと「動く死体」というホラー要素のインパクトが薄くなるというか、リアリティラインが下がりすぎてしまうので、屍化にはたっぷり時間を掛ける必要がある、と判断したのでした。数十万文字の大長編にしていいなら、怪異パートをいくらでもやっていけそうではあるんですが、そこはそれ。長すぎると完結させられず投げ出してしまいそうなので、どうしてもちゃんと終えたくてこうなりました。

 あと、最初は道眞・百舌鳥・別天というアダルティなトリオでやる予定だったのですが、「もうちょっと華が欲しい」ということで茅ちゃんを入れたことで、だいぶ動きやすくなったのも面白い発見です。私は女性キャラを書くことが苦手だと思っていたんですが、茅ちゃんでだいぶそのへんが緩和された気がしますね。


 短編などはいくつか書いていたのですが、カクヨムで長編を書いたのは二年ぶりではないでしょうか。やはり自分は長編が好きだなあ、と再確認しました。
 去年は色々あって手が回っていなかったのですが、まだ長編の構想はいくつもあるので、今年はさらに二本目、三本目と書いていきたいです。
 それでは、『廃絶すべし、娑輪馗廻』をお読み頂き、ありがとうございました!

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する