夜、一番好きな深夜が訪れた23時
まだ今日である深夜
斜め上に薄いオリオン座が見えた
昔はあの形に歪(いびつ)さを感じて嫌いだった
でも有名過ぎるが故か、ずーっと見てしまう
暗い空に目が眩まないのは
多分あの印のせいだろう
危なくても天を仰いだ
多分昼は影が見えるから
下の景色に退屈しなかったが
夜はいないから
暗い先のオリオンを見てしまう
あの時は何も見たくない心の先が
夜の空だった
そして今、少し成長した心の先
斜め上のあの日より薄いオリオンを見つけた
きっと今は、あの日に比べれば幸せなのだろうが
目はどうしてもあの星に吸い寄せられてしまう
真下を目指してしまう
大人の高さをした靴の音と
未熟者の軽いローファーの音が
重なった
静かな夜に負けないくらい
何も感じない心だが
この時間が荒波を平(なら)す
離れていくオリオンと近づく鱗雲
明日は雨だ
それでもただじっと空を見る
それだけ。ほんとそれだけ。