• 現代ファンタジー

小説家のせき

 咳をしてもひとり

 現代にはなかなか馴染まない音だな。

 でも馴染んでいないだけで、こんな時は何度もある。

 ひとり、好きだからいいけどね。

 折角なんだからカフェに行こう。

 ホットひとつ。並々に注がれて、今日初めて温かいものを手に取った。
 
 スマホ、ペン、ノート。これしか触っていなかった。

 一人のカフェって病みつきになる。

 と、思っていたら空いている店内の対面にカップルが座る。

 よりによって何でここに。

 しかもこのご時世、席なんていくらでも空いてるのに。

 楽しそうな会話するねー。

 ケーキが食べれる彼女、羨ましい。

 私は一杯のブラック。しかもスーツ。

 惨め…とはあいにく思わない。

 だって、店内に流れるのは陽気な洋楽だったから。

 というか、コーヒーが温かかったから?

 だからやめられないのよ。ブラックは。

 コーヒーの香りが消えていく。

 この時間は30分でおしまい。

 私は小説家、なのでね。

 あ、“thank you”だって

 

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