夏暑すぎて終わったわ。買い物したいのに出られない。天気天気的にウォームタイム♪な今日この頃いかがお過ごしでしょうか。私はエアコンの効いた室内に引きこもっています。天気の話題といえば雑談のお約束ですが、誰しも影響しますからね。何故ニュース番組で天気予報を常に流しているかといえば、お天気次第で仕事や部活動の予定も変わったりしてしまうからですよね。天気というのは創作にしたら強いテーマだと思うのです。例えば、新海誠監督の映画の『天気の子』のヒットなんかも、誰しも身近な題材だから受け入れやすかったんじゃないでしょうか。そんなわけで、今回は暑さや水に関係する作品を選んでみました。8月に入って夏本番、皆さんも夏休みを満喫している頃かと思いますが、暑い中で無理をせず日陰で休憩したり、水分補給をしたりして楽しい思い出を作ってくださいね。
ルタカ王国の威信を賭けたスタジアム建設。そこで最も貢献した王子を王位継承者とする。現国王の勅令により、割り振られた区画で現場監督することになった主人公の第22王子ケンは、兄王子たちの不興を買わないように、とことんまで現場の工員に優しくして、工事の進捗を遅らせようとするが……。
炎天下の工事現場で現場監督になった底辺王子が、異世界の建築の常識を覆して成り上がっていく展開が愉快です。
監督を任された王子たちは工員が熱中症や事故で亡くなってもお構いなく、奴隷のように働かせるばかり。当然、そんな劣悪な環境では効率もやる気も上がるはずがありません。
しかしケン王子の担当区画だけは水分補給と休憩が許され、事故防止と安全管理が徹底された結果、労災が激減! ケン王子に感謝する工員の努力で効率が爆上がり! 王位継承レースのトップに躍り出ていくのです。
ケン王子も、わざと負けるために手間を重ねているのにどうして効率が上がるか、自分でも理解してない点がコミカルなんですよ。
王になる気はないケン王子ですが、工員たちと一緒に汗を流して働くうちに次第に彼らを守りたい気持ちが湧いてくる。建設が進むうちに王としても成長していくケン王子の改革に注目です。
(「暑い夏こそ水分補給」4選/文=愛咲優詩)
使い捨てが美徳とされる資源豊富なアルケイン王国で、「リサイクル」というスキルを授かった王子ノアクルは、不吉の象徴として海へ追放されてしまう。嵐を生き延びたノアクルは、海上に漂うゴミを活用してイカダを広げ、仲間を集め、人知れず海上国家を築いていく。
海水から飲み水を、廃材から素材を。ゴミを再生するスキル「リサイクル」を駆使してサバイバルを繰り広げる海洋冒険ファンタジーです。
海流によって集まる大量のゴミからオールや帆を作り、釣り竿を作って魚を釣り、イカダの上で生活基盤を充実させていくリサイクルクラフトがワクワクするんですよ。
航海の途中で力を失った土地神や、国から切り捨てられた私掠船海賊団など、ノアクルのように捨てられた者たちを仲間に引き入れ、一大勢力を築いていくのもロマンが掻き立てられます。
そして各地で活躍するノアクルたちの行動が巡り巡って、彼らを捨てたアルケイン王国を揺るがしていくのが痛快なんです。
物や人を大切にする心が世界を変えていく、現実の私たちも見習わなければと思わせる作品です。
(「暑い夏こそ水分補給」4選/文=愛咲優詩)
二〇二×年。日本で突如巻き起こったサウナブームは、熱狂と共にサウナの競技化をもたらした。中学時代、スポーツサウナ「GTS」の頂点に立ちながらも勝ち負けを嫌い、サウナを去った福良大海は、謎の美少女女子高生・海城蒼に導かれ、高校で再びGTSの舞台へと舞い戻る。
「GTS」は、サウナ、水風呂、休憩までの正確性を競う競技です。サウナの熱波に耐える忍耐力、時間を正確に刻む時間感覚、周囲の重圧を跳ね除ける集中力が問われる過酷なスポーツなのです。
作中でも登場人物が口にしているように、実にバカバカしい競技です。正直、私もそう思います。バカげているのを自覚しながらも主人公の大海や、GTS部の部員が真剣にGTSに挑むのは、サウナがもたらす"ととのい"を得るため。
サウナで浴びた高熱を水風呂で一気に冷やし、ベンチで身体と心を休める。一連のサウナルーティンでもたらされる悟りの境地、それが"ととのい"なのです。
誰よりも深く、誰よりも自由に。そのために運動部ばりのトレーニングを繰り広げる大海とGTS部の情熱を目の当たりにすれば、ただサウナに入るだけとは言えません。これはもうスポ根といっても過言ではないでしょう。
どんなにバカげていようが本気でサウナの帝王を目指す高校生たち。こんな熱い青春もあっていい。
(「暑い夏こそ水分補給」4選/文=愛咲優詩)
雨の日だけ開店する不思議な喫茶店『かふぇ・れいん』。明るく美人な夕雨さんと、穏やかな青年の雨月さんの二人が切り盛りするこの喫茶店では、美味しいスイーツやお茶が皆様のご来店をお待ちしています。
店内ではしとしとと雨音が響き、ゆっくりと時間が流れる。学校帰りの学生さんが勉強したり、会社員やOLさんが一息ついたり、常連の老夫婦がスイーツを楽しんだりと、老若男女が思い思いにくつろぐ穏やかな雰囲気が素敵なんです。
不思議なことに、この喫茶店には特別な縁のある人しか辿り着けない。そして訪れるお客様は心に悲しみや苦しみを抱えている人ばかり。
お客様たちはスタッフとの何気ない会話を楽しみ、静かな時間を過ごして気分をリフレッシュし、再び日常へと帰っていきます。
そもそも何故、雨の日だけに開店しているのか。そこには夕雨さんと雨月さんの秘密が隠されている。徐々に明かされていく神秘的で独特な世界観に魅了されます。
雨の日はジメジメしたり、洗濯物が乾かなかったり、イベントが中止になったり嫌いな人も多いかもしれません。でも、そんな雨の日もこの喫茶店では特別な日に感じられて、愛おしくなる作品です。
(「暑い夏こそ水分補給」4選/文=愛咲優詩)