夏と言えば怪談! たまにはベタベタな季節企画をしてみたい! というわけで今月のテーマは怖いお話です!
ちなみにわたくし、怖い話は高いところと同じくらい苦手です。そもそも理屈じゃないのでなぜ怖いのかは説明できないのですが、だからこそ創作だってわかってましても怖いは怖い! 某ゲームの手抜き主人公の名前みたいに「ああああ」とか言いながら選ばせていただきましたよね。ええ、それはもう狂おしいほどおっさんなんですけどね。
ま、とにかくです。みなさまに出逢っていただきたい怖い4作、どうぞお楽しみくださいませー。

ピックアップ

140字にはめ込まれた怪しの珠玉

  • ★★★ Excellent!!!

ツイッターの1つぶやき、その最大文字数である140字内でひとつの「怪談」を語る超掌編オムニバス!

こちらツイッターで著者さんが展開しております『140文字の怪談』のカクヨム版となっております。怪談というものはオチこそ勝負かと思うのですが、ここに収録されている怪談、実に美しくオチているのですよ!

まず140字で談を収めるために無駄を全部削ぎ落とした起承転、あるいは序破があります。当然、それは淡々とした語りになるのですが、実はこれ、怪談における怖さ演出の王道「溜め」そのものなんですよね。

語り部が低いぼそぼそ声で語るのは、声を張って告げるオチの怖さを際立たせるため。それが必然的に為されていればこそ、談の全貌を表現するオチがライトアップされるわけです。長い溜めからの必殺技! って感じで。この構成が本当に効いていて、たった140字なのにハラハラ焦らされますし、オチに心動かされるのです。
すぐ読み終わる「はず」の怪談集、熱帯夜のお供にぜひ。

(「暑さに効く怖さ」4選/文=髙橋 剛)

誰ひとり逃げられない死の物語

  • ★★★ Excellent!!!

「救いがない」をテーマに綴られた創作怪談。

テーマからもわかる通りに理不尽系な怪談なのですが……本当に理不尽です。各話の主人公はただ行き合っただけで、思い余っただけで、それどころかなにもしていないのに確定死をプレゼントされますからね。

しかもですよ、そこまでの流れがしっかりと、風情や情緒まで織り込まれたエピソードとして描かれているのです。怪談とは内容を引き伸ばすほど野暮に堕ちやすいものなのですが、この作品の場合、見事に物語化されているのがすばらしい――いや、恐ろしい点ですね。なぜなら、読者は順を追って「なにがどう怖いのか」を見せつけられますし、さらには主人公のことを知ってしまったがゆえに親近感を抱きます。そうなればもう、かならず訪れる理不尽なオチから逃げる術はありません。末路を見届けるよりなくなるわけなんですよ!

怖くなって悔しくなる怪談ならぬ怪談ドラマ、文章読みのみなさまにおすすめです。

(「暑さに効く怖さ」4選/文=髙橋 剛)

ストーカーに狙われていても今日は過ぎて明日が来る

  • ★★★ Excellent!!!

ストーカーに見込まれてしまった23歳女子。会社は辞めたし弁護士や警察は役に立たないしストーカーは消えない、しかし、それでも彼女は毎日を精いっぱい楽しく生きていく。

幽霊も怖いですけど、この作品で怖いのは人間。それを徹底的に被害者である“わたし”目線で綴っているのですが……彼女は基本的に前向きでいじらしく、悩んでいるばかりじゃなくて、小さな楽しみを見つけながら日々普通に過ごしている人なのです。そしてその普通がですね、普通じゃないものを浮き彫るのです。ストーカーという見えない恐怖を。

これにつきましては、“わたし”さんの日録という構成的機能が本当によく効いていますね。“わたし”さんの心情変化と共にストーカーの心情変化が順を追って辿られていく。でも視点はしっかり“わたし”さんに据えられているので、ストーカーが蠢く“行間”がも作ることができている。このうまさ、唸らせられますねぇ。

確かな筆力で描かれた、緻密にしてゆるふわな怖いお話。一読の価値ありありですよ!

(「暑さに効く怖さ」4選/文=髙橋 剛)

語られるのは正真正銘、体験談。

  • ★★★ Excellent!!!

著者や知人が体験した怖い系の話をまとめ、一人称形式で構成したオムニバス作。
実話は実話であるというだけでおもしろいものですが、それが怖い話で、さらに「誰かの口から聞く」となれば超おもしろい! で、こちらはその「超」を短編として、たっぷりと味わわせてくれる作品なのです。

ネタ元が著者さん始め実在の人ということで、怖さの幅も深さも各話でぜんぜんちがいます。ストレートに怖い話も意味がわかると怖い話も、怖いより不思議な話も、その他諸々の怖い話があって……それらを読んでいくとしみじみ思うのですよ。人や霊ばかりじゃなく、怖さというものにもいろいろな個性があるんだなって。そしてそう感じられるのは、バラエティな怖さがひとつところに集められた小説という場があってのものだと。

ぜひとも知人が切り出した話を何気なく聞くことになった感じで読んでください。聞かされた怖い話は、きっとあなたに「超」体験をさせてくれますから!

(「暑さに効く怖さ」4選/文=髙橋 剛)