カクヨムでは最近マルチタレントな作者をよく見かけます。作曲家だったり、コンサルタント業だったり、職人だったり、アスリートだったり、料理人だったりと業態もさまざま。むしろ本業の傍ら、趣味でラノベを投稿しているという方が正しいのでしょう。そういう時代になったのでしょうね。そうした作者の作品は一般人の知らない業界の知識や経験がフィードバックされていて、それだけで他と差別化された強みとなって人気を伸ばしているように見えます。伸び悩んでいる作者の皆さんにも、この分野なら他の誰にも負けないと誇れる強みがあるのではないでしょうか。それを探してみてください。皆さんにしか書けない物語を待っています。
アパートで一人暮らしの貧乏大学生・家森夕は、節約のために料理をする自炊男子。ひょんなことから隣室に住む女子高生・旭日真昼と知り合い、不器用で料理オンチの彼女を夕食に誘ったことから始まるご近所付き合いが美味しそうで可愛らしいです。
主人公の夕は自炊男子といっても作れるのは冷蔵庫の余り物を適当に合わせただけの手軽な男子メシ。それでも「誰かと一緒に食べるご飯は何でも美味しい」と、いつも喜んで料理を食べる真昼の笑顔と食べっぷりが好き!
ときには真昼に料理を教えるために一緒に台所に立って料理を作り上げることも。真昼が失敗しないかハラハラと気を揉む心配性な夕と、ジャガイモの皮も満足に剥けないのに何故か自信満々な真昼の掛け合いが微笑ましい。そんなこんなで完成した料理は、苦労というスパイスでいつもより不思議と美味しそうに思える。
まるで年の離れた兄妹か、あるいは母親と幼い子供が一緒に料理を作っているかのような家庭的な雰囲気が和みます。
お互いに恋愛感情はないつもりなのに、二人の近所付き合いは周囲の目には奇異に映り、友人たちの干渉で揺れ動く二人の関係が気になります。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)
八重垣高校に入学した高校一年生・空木ましろは、隠れオタクのBL腐女子。そんな彼女が、学園一の美少女と名高い先輩・梓川ほたか率いる女子登山部に入部してインターハイを目指すことに! 個性豊かな美少女ヒロインたちの百合の花が咲き乱れるガールミーツガールズなストーリーにニヤニヤしました。
主人公の空木ましろは、ごく平凡なインドア女子。けれども登山部の部長・梓川ほたかは学校中の人気を集める大和撫子、その他の部員も人見知りのメカクレロリ巨乳の伊吹千景、喧嘩っ早い金髪ヤンキーの劔美嶺と、何故か美少女揃い!
部活動としてトレーニングや準備をしているだけなのに、二次元から飛び出してきたような美少女たちのラッキースケベに次々と被弾して、ましろの妄想がとめどなく流れて艶めいていく部活風景がたまらない!
「自分に百合の気はないはずだ、しっかりしろ!」と自制しながらも、毎回、自らフラグを立てにいくましろの空回りが笑いを誘います。
余談ですが、本文中には外部のイラスト投稿サイトへのリンクがあり、そちらで作者オリジナルの挿絵が提供されています。クオリティが高く、一枚目の表紙絵を見るだけでも損はさせません!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)
任務の失敗により廃棄された最新鋭戦闘アンドロイド・ハルジオンが、とある老夫婦の家に引き取られ、そこで家事アンドロイドとして第二の人生を与えられ、家族として受け入れられていくストーリーがほのぼのとして癒やされました。
人間に作られたアンドロイドながら社会の正義を実現する剣としての使命を誇りに、日夜、凶悪犯と戦っていたハルジオンを始めとした騎士隊のアンドロイドたち。しかし偏見と誤解によって我が身を犠牲にして守った市民たちから無下に扱われ、大切な誇りを汚されていく姿に胸が締め付けられます。
廃棄寸前の彼を拾い上げたのは、おっとりして上品な婦人のエヴェリンと、ダンディな老紳士のアルバートのハミルトン夫妻。アンドロイドへの偏見を持たない老夫婦と、戦闘機械として生まれたハルジオンが初めて過ごす、戦いとは無縁の隠居生活がのんびりと穏やかで、心が安らぎます。
そんなハミルトン家に新しい家族として小さな白猫がやってきて……というところで残念ながら続いています! 元戦闘アンドロイドと無邪気な子猫が、どのような物語を紡いでくれるのか、これから先の期待も込めてオススメします!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)
とある市立中学校に転任してた40歳の中年教師・葉山典之。見た目はどこにでもいる普通のおっさんだが、人は彼を「ハテンコー先生」と呼ぶ。「子供たちをハッピーに」を目標に掲げ、常識に凝り固まった教師たちの目を覚まし、問題だらけの教育現場を改善していく光景に感銘を受けました。
ハテンコー先生は普通の教師とはひと味もふた味も違う。問題児を指導室に呼んでも話を聞くだけ、保護者には謝ってばかり、とくに生徒に厳しいわけでも熱血教師というわけでもないのに不思議と生徒に信頼され、いつの間にか問題が解決するのだ。そこには心理学や行動学にも通じる、まったく新しい独自メソッドに基づく教育法があり、従来の教育にはない視点や考え方が画期的で面白い。
ハテンコー先生に影響されて周囲の教師たちにも徐々に変化が訪れ、教師と生徒の信頼関係で自然と生まれていく笑顔に心が洗われます。
いつの時代も教師は自由を求める若者たちの嫌われ者。しかし教師も完璧な存在じゃない。教師も悩んで誰かに助けを求めている一人の人間なんだということに気づかせてくれます。学校が嫌い、先生が苦手という方にこそ、読んで欲しい一作です。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)