先日パソコンを買い換えました。最高性能というほどではありませんが、ミドルクラスの最新型です。以前のは5、6年間酷使し続けていた骨董品でした。この業界にいると「HDDがクラッシュして原稿が吹っ飛んだ」なんて事故報告が後を絶ちません。無理が祟って手遅れになる前に先手を打ちました。書き手のみなさんも原稿ファイルの管理にはくれぐれも注意してください。どんなに時間をかけた大切な作品も失われるときは一瞬です。いまはクラウドサービスを利用するのも手です。執筆環境を変えると新しいアイデアも浮かぶかもしれません。自分にあった方法を模索してみてはいかがでしょうか。

ピックアップ

異世界でも絵は描ける! 孤児から始まるお絵描き人生

  • ★★★ Excellent!!!

 絵描きを目指す女子高生が夢半ばで異世界へ転生する。そこは七色の女神と黒の神が崇められるファンタジーの世界。孤児の幼女ノアールとして孤児院に入った彼女は絵描きを目指して人生をやり直す。

 しかし、食べる物にも困る貧しい孤児院には絵を描くための画用紙も筆も絵の具もない。

 美大への進学や平穏な生活も今までのすべてを失い、底辺階級の孤児にまで落ちてしまったけれど、絵を描きたいという願いだけは失われない。

 何もないゼロの状態からお金を稼いで高価な画材を手に入れ、周囲に絵を描くことを認めてもらうために奔走する。

 さまざまな苦難や試練を乗り越えながら自分の夢を追いかけるノアールの姿が心を揺さぶります。

 孤児院の義父母のフリントとネリ、院仲間の少年トープ、心優しいゴブリンのガガエ、たくさんの人と出会い、別れ、ときには喧嘩し、助けられながら好きな絵を描いていく。

 果たしてノワールは異世界で絵描きになれるのか。そしてどんな名画を描きあげるのか。成長を見守りたい。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)

巨大悪徳企業をぶっ潰せ! 箱根を賭けた赤と黒の熱闘賭博伝

  • ★★★ Excellent!!!

 企業間の対立から勃発した大戦によって崩壊した日本。人々は温かさを求めて温泉街に集まった。荒廃した世界で鎬を削る無頼漢たちを人は「温泉狂」と呼んだ。

 博打打ちの青年・星月健太郎と、赤色を透視する超能力少女・桜庭エミリが社会の巨悪を倒すジャイアントキリングが本作の見所です。

 箱根の旅館と賭場を仕切る巨大企業『大黒天グループ』の打倒を掲げ、タッグを組んだ二人は各地の賭場で連戦連勝。そんな二人にグループ主催の超高額賭博対決「レッド・オア・ブラック」への招待状が届き、大金を賭けた大勝負へと挑む。

 健太郎の勝負勘とエミリの超能力を武器に勝ち上がる痛快さが小気味よい。しかし対戦相手も強者揃いで侮れない。

 予想外の奇策や超人技が飛び出ては歓声が沸き。引き離されたかと思えば一気に追い抜く逆転劇に盛り上がる。お互いに最後まで諦めず、貪欲に勝ちを求めて粘りに粘る。知略や駆け引きを越えた意地と気合の激突が手に汗握る。

 いつしか恨みや憎しみも忘れて、敵も味方も観客も勝ち負けに熱中し、皆で叫んで喚いて怒号が飛び交う馬鹿騒ぎの博打シーンが読者を熱狂と興奮に引き込みます。

 まさに温泉でのぼせたかのような読後感を味わいました。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)

一番大変なことが一番楽しい! 仕事は99%の苦労と1%の幸せ

  • ★★★ Excellent!!!

 大手求人広告店に勤める一ノ瀬蒼梧のもとに、ある日、異世界で貿易会社を営むJKエルフ社長・ラクスが現れる。結婚の約束をしたと言うが蒼梧にはさっぱり覚えがない。さらには彼女の会社へ誘われて……。

 しがないサラリーマンに突然訪れた人生の転機を描き、働くことについて問いかけています。

 夢を抱いて入社したのに今ではすっかり仕事への情熱をなくし、ただ営業成績の数字を追いかける蒼梧は、現代の社会人の等身大の姿といえます。

 世間ずれした蒼梧にとって、仕事に理想を求める後輩女子の生駒や、一途な想いをぶつけてくるラクスは眩しすぎ、ついつい二人にキツく当たってしまう。

 今の仕事にやり甲斐はあるのか。誰かのための仕事じゃないのか。生駒やラクスの指摘に惰性に陥っていた自分を次第に見つめ直す。

 苦しくて報われないのに何故働くのか。蒼梧の自問自答が読者にも突き刺さります。

 懊悩する蒼梧だが現実は待ってくれない。営業ノルマの期限が迫り、結果を出さねばならない時が訪れる。そして最後に蒼梧は答えを出す。

どんな業種の仕事にも通じる真理がこの作品に秘められている気がします。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)

美少女はメ○カリで買える。所有者カレシと所有物カノジョ

  • ★★★ Excellent!!!

 「美少女(新品):3980円」。メ○カリで見かけた怪しげな出品を気まぐれで購入した大学生の興野理太。商品を受け取りに行くとそこには見惚れるような金髪美少女がいて……。

 ぼっちで不器用な理太と、可愛くて厚かましい夕雨の恋愛模様に笑い転げて、胸が締め付けられました。

 「私はあなたに買われたんです。私はあなたのものです」といいながらも、自分の所有者である理太へ遠慮も礼儀もなく、口を開けば理太をからかうようなボケを連発する。性的なことも囁いていつも理太の心を戸惑わせる。

 自分のものを何も持っていない夕雨に服を買ったり、食事をご馳走したり、彼女を養うためにバイトを増やしたりと、どちらが主人か下僕かわからない。疲れて自宅に帰ると美少女に出迎えられ、肉じゃがを作ってもらうことにちょっぴり幸せを感じたり、そんな日常的な同棲生活の悲喜交交が愛おしい。

 しかし、何故か夕雨には「自分」がない。自分自身の欲求が薄く、ただただ理太に従順で、人間味はあるが人間性がどこか欠けている。そんな彼女と暮らすうちに、理太は夕雨にとっての幸せを探しはじめる。

 いったい夕雨は何者なのか。ラブコメを越えた先の驚愕の真相に注目です。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)