新作を選ぶときは、偏らせつつ偏りのない作品を選んでいます。テーマが個性的であったり、珍しいジャンルだったりするもの。しかし、ただそれだけではなく王道を踏まえつつ、世代や性別で読者を差別せず読めるような大衆性のあるもの。矛盾してますよね。とくに新作だと星やフォロワーの数も少ないので、とにかく数を読んで自分の感覚だけが頼りです。そうやって「これはオススメできる」という作品を見つけたときの喜びはひとしお。皆さんもそれぞれ拘りがあると思います。その拘りで作品を探して周囲にオススメしてみてください。きっと苦労しただけの喜びもありますよ。

ピックアップ

消滅寸前の世界より。新米公務員が見た現代社会の真実

  • ★★★ Excellent!!!

限界集落の立ち退きに従事する地方公務員を主人公にした視点が、まず独創的です。

生活に不便な限界集落にあえて暮らす"平成生まれ"の高齢者たちは、頑固だったり、偏屈だったり、変わり者ばかり。そんな気難しい人たちの理不尽な要求に役所が振り回されるのはいつの時代も変わらない。

部署に配属されたばかりの新人の井沢は、物心ついた頃からAIに接して成長したAI世代の若者で、理解不能な思考や執着を持った老人たちの対応に四苦八苦する姿が可笑しい。

もちろん、読者の私たちから見れば、高齢者たちの考えのほうが当たり前の常識だ。しかし、未来の若者には古い常識は通用しない。昔の人々は、なんと非効率、非論理、非寛容な人間かと井沢が呆れてしまうのもわかります。

現代社会の矛盾を突いた掛け合い、社会風刺の利いた世界観にニヤリとさせられる。

時代の変化に抗う限界集落の人々の姿から、いまの社会から失われつつあるものに気づきます。

人間とはなにか、社会とはなにか、限界集落から世界の本当の姿を映し出す、社会派な作品です。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)

王女を担保に金貨三千枚融資します。金貸青年と担保王女の戦記ファンタジー

  • ★★★ Excellent!!!

魔王軍の侵略によって窮地に追い込まれたメルクリア王国。
都市国家ラノベガスのアヴァロニア金融のアダムは、戦費として国家予算にも等しい金貨三千枚の融資と引き換えに、十歳になったばかりの王女シャロンを担保として契約を結んだ。

その王女シャロンは幼くして国際的な学術賞を獲るほどの天才少女で、彼女の才能を獲得することがアダムの、アヴァロニア金融の真の目的だった!

一流冒険者を凌ぐ戦闘力を備えた謎の金貸し青年アダムと、安全のために隣国に身を寄せた王女シャロン、キーマンとなる二人の存在が興味をかきたてる。

魔物や亜人の大部隊を率いて攻め込む魔王軍。
主義主張の違いから団結できない人類の国々。
その裏で暗躍するアダムたちアヴァロニア金融。
剣と魔法、人と金、力と頭脳が交錯する世界観が壮大だ。

いまのところメインキャラクター周辺の人々と魔王軍の戦いを描いているが、これからどうアダムとシャロンが戦争に介入していくのか、今後の展開に期待したい。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)

Vの世はまさに戦国時代! 陰キャなバーチャルアイドルの育てかた

  • ★★★ Excellent!!!

目つきの悪さから不良と思われている主人公・剣崎剛毅は、実はバーチャルアイドルオタク。
彼が最もハマっている人気バーチャルアイドル《銀の向日葵》の正体が、クラスメイトの根暗な女子・早乙女秋桜だと知り、そこから始まる不良少年と陰キャ少女の交流がもどかしくも清々しい。

早乙女と剣崎が、配信者とファンが励まし合って配信を盛り上げていく光景に、そうだよ! これだよ∨っていうのは! ファンはただのお客様じゃない! 一緒に歩いていく仲間なんだよ!と読んでいる間に何度も頷いてしまいます。

バーチャルでは流暢にキャラを演じられるのに、リアルでは吃音で自虐的な早乙女に「俺はおまえを認めている。それで充分だ」と、ストレートに励ます剣崎がカッコイイんだ。

陰キャだからバ美肉に逃げているのではなく、自分を変えたいからバ美肉に挑戦している。いつも思いを押し殺してしまう早乙女だからこそ、次第に口に出てくる言葉が胸を打ちます。

陰キャだけじゃなく、陽キャでリアルが充実しているように見える人も、それぞれ悩みを抱えている。どんな人でも平等に受け入れるバーチャルの世界に救われる。

リアルとバーチャルの光と陰を描き出した青春恋愛ストーリーです。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)

君も小説家になれる! 夢に向かって頑張るって、超素敵じゃん!

  • ★★★ Excellent!!!

小説家を目指すも、ある事故のトラウマからペンが握れない高校一年生の加賀誠一。

夢を諦めようとした誠一の前に銀髪碧眼褐色肌の美少女サキュバス・ジュリが現れ、周囲の応援によって再び夢に向かって走り出す姿が、いかにも青春で情熱にあふれて眩しい。

人間の夢を叶えるために協力し、その見返りにオーラを食べる見習いサキュバスであるジュリはとにかくパワフルで、誠一の諦観の壁をぶち壊していく積極性が痛快。

なんの根拠も理由もないが、「君なら、なれるよ!」と無条件で信じて励ますジュリの微笑みに胸がホワッと暖かくなり、なんでもやれそうな気力が湧いてきます。

周囲に自分の夢を打ち明けると応援する友人も現れ、文豪フリマで出会った仲間と小説を形にしていく、執筆の苦労の中にも喜びや興奮があり、夢を追うって素晴らしいな!と心を揺さぶられました。

そして能天気なギャルにみえるジュリも、実は過去の後悔を引きずっていて誠一に救われている。人はひとりじゃない、誰かと誰かが支え合う優しさが作品から伝わってきました。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)