大人も子供も、甲子園に参加したい! “僕らに贈る物語”を、みんなで創ろう!
802 作品
このたびは「大人も子供も参加できる! カクヨム甲子園《テーマ別》」にご応募いただき、誠にありがとうございました。
4つのテーマをもとにした短編作品という少々難易度の高いコンテストでしたが、802作もの応募作が集まり、編集部一同楽しく選考させていただきました。
こちらの意図した通りきちんとテーマに沿った丁寧な作品もあれば、斬新な切り口でテーマをとらえた作品もあり、短編という制約がある中、読みごたえのある作品が多かったのが印象的でした。
その中から今回は若年層読者が読みやすく、かつ読んだ際に新鮮な驚きや感動がある作品を賞として選出いたしました。
本来、大賞受賞はコンテスト全体で一作品となる予定でしたが、甲乙つけがたい優秀な作品が多かったことから、テーマごとに大賞作品を選出させていただく運びとなりました。
今回の受賞作はアンソロジーとして書籍化予定となっております。たくさんの人に読んでいただける幸せな本となることを我々も期待しております。
受賞作の刊行をぜひ楽しみにお待ちいただければ幸いです。
総評・講評:新レーベル編集部
「恐怖はSNSからはじまった」部門
入学した高校で人間関係に失敗した愛は、ツイッターを通じて『友達』になった「るきり」とのネット交流にはまり込む。しかし、心が通じたと思っていた「るきり」には別の顔があり、次第に愛の日常に恐怖が忍び寄って来て……。
「きのう、失恋した」部門
瀬川由衣は高校二年生。ある朝、不思議なことに気付く。同じ日が繰り返されているのだ! 昨日は6月6日だったはずなのに、今日もまた6月6日なのだ…。
彼女の他にこの現象に気付いているのは、クラスメートの山下あかりだけ。山下あかりの失恋が、ひょっとするとこの事態に関係しているのではないかと思った由衣は、なんとかこのループを抜け出そうとするが…。
失恋という大きく感情が揺らぐイベントをどうやってハッピーに、時にはシリアスに、はたまたコミカルに、面白く届けようかという工夫を凝らした意欲作がたくさん集まりました。その中でも「失恋というのはつらいこと……でも新しいことが始まるキッカケになる」そんな特別な日の出来事が瑞々しいタッチで描かれた本作は、失恋する物哀しさを別の輝きをもつ嬉しさに変えてくれました。「なんかうまくいかないなぁ」なんて落ち込みそうになったとき元気をくれる青春ストーリーです。
「キミは絶対に騙される」部門
何かと「傷」の伴う日常に疲れ果てた「私」は、入れ替わりの怪談である「赤い扉の透子さん」と出会い、透明人間の世界に連れ去られたいと願った。しかし怪談としての彼女は、私が聞いたウワサとだいぶ違っていて……。
人とは価値観を持つ違う怪談・透子さんとの命がけの交渉。主人公の心理描写や緊迫した状況を文字だけでしっかりと描写されており、交渉の決着まで流れるように読んでしまいました。そして、決着からのさらなるドンデン返し、テーマにあった素晴らしい作品であるとして、大賞とさせていただきました。
「扉の向こうは不思議な世界」部門
忘れ去られたような旧図書館で女子高生・花帆が出会った先輩の正体は――
先生に掃除を頼まれ、心霊スポットとして名高い旧図書館へ行くことになってしまった宮本花帆、高校一年生。
そこで出会った先輩・坊城日向と、深まるような深まらないような親交をあたためている最中、日向にある疑惑が持ちあがって……!?
初めて彼氏ができた親友との関係に悩む、高校一年生の花帆が主人公の本作。そんな高校生の悩みと、旧図書館の扉の向こうでの、少年とのちょっと不思議な出会いの行く末が気になり、一息に読み進めました。親友とのすれ違い、少年との会話、そして旧図書館の謎、作品で描かれる一つ一つが、高校生の主人公の切実な心情を照らし出していて、ぜひ朝読で中高生の方々に読んでいただきたい作品として大賞に選出しました。
「扉の向こうは不思議な世界」部門
物置となっている隣の部屋から毎日聞こえる声。その正体は並行世界に住む女の子だった。
僕は彼女のことを好きになるが、並行世界へは見えない壁にさえぎられて行くことはできない。僕がこの恋を成就させるために選ぶ道とは――。
「並行世界」はどんな世界なのか? その考え方がおもしろい作品でした。隣の部屋との仕切りのふすまが並行世界に繋がっていて、「僕」は、越えられないそのふすまの向こうに住む女の子に恋をする。並行世界の在り方とリンクした「僕」の恋が、爽やかにテンポよく描き出されていて、エンタテインメントとしてとても楽しめました。中高生の方々にも楽しんでもらえると思います。
「扉の向こうは不思議な世界」部門
忘れ去られたような旧図書館で女子高生・花帆が出会った先輩の正体は――
先生に掃除を頼まれ、心霊スポットとして名高い旧図書館へ行くことになってしまった宮本花帆、高校一年生。
そこで出会った先輩・坊城日向と、深まるような深まらないような親交をあたためている最中、日向にある疑惑が持ちあがって……!?
中高生読者審査員の皆さんが選んだ、今の中高生が読みたい作品です。以下のようなコメントをいただきました。(コメントは一部を抜粋しています。)
◇真実がわかったとき、思わず最初から読み返してしまった。伏線がものすごく自然でいい。とても柔らかであたたかい物語。
◇瞬きすら忘れて一読。不思議な手応えに読み返してみれば鳥肌が立ちます。身体中を駆け巡るああ、そういうことだったんだ!という感激を、きっと誰もが感じます。
◇読んでいてリアルな中高生の悩みで共感しやすく、キュンキュンしました。
◇二人だけの身に起こった不思議な体験のようで、「先生が居なければ成り立たない」という第三者の存在が良いと思った。偶然ではなく「人が起こした」奇跡のような感じが良かった。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
「大人も子供も参加できる! カクヨム甲子園《テーマ別》」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
選 評
SNSを使う高校生の自然な描写と、主人公の感情の吐露が秀逸でした。何気なく読み進めたときに浮かび上がってくる恐怖がまさにテーマに即していたと思います。恐怖はSNSからはじまって、現実的な恐怖にも繋がる。これは、私たちの生きる現実におけるSNSにも接続する話です。SNSでやりとりする相手が"本物"だなんて、誰が証明できるのでしょうか。