この物語を手に取ることは、未知のウイルスの培養瓶を開ける行為に等しい、かもしれません。読者が依って立つ「現実」という基盤を、じっとりと湿った異界の論理で上書きし、視神経から脳内までを「感染」させていく…。最も悪質な感染ポイントは、主人公・葉介の「空虚」への共感ではないでしょうか。「記憶の上書き」という猛毒は、恐ろしいほど甘美な救済として受容されてしまうかと。読後、あなたは鏡を見るのが怖くなるはずだ。そこに映る自分の顔が、果たしてオリジナルの自分なのか…
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