クラスの女子をモデルに手描きした僕のエロマンガが、高値で裏取引されているらしい

独立国家の作り方

モデルとなった水原さん

さかき君、放課後ちょっといいかしら」


 僕のクラスには、大人しくて読書好きな女子がいる。

 水原香織みずはらかおりさん。

 ちなみに、僕の片思いの人だ。

 そんな、普段あまり人と接しない彼女が、突然に声をかけて来た。

 一体、何が起こったというのだろうか?

 彼女とは、小中学校も同じだったにも関わらず、ほとんど話したことが無かった。

 無理もない、僕も彼女も、基本的に人と接することが苦手なタイプだ。

 僕の場合は、単にコミュ障なだけだけど、水原さんは人をあえて遠ざけているような印象を受ける。 

 特徴的な長い黒髪にメガネ、真面目だけどクラス委員長などはせず、図書委員や環境美化委員などの地味な役を買って出るようなタイプだ。


 そして僕には秘密がある。


 誰にも見られない絶対領域、そんな自分のノートには、僕のエロい妄想の全てが描き出されている。

 モデルは水原さんだ。

 リアルでは彼女に近付く事さえ出来ない僕でも、妄想の世界では自由だ。

 自分で言うのもなんだけど、陰キャの妄想力は凄まじく、マンガの中の彼女は妊娠寸前状態。こんなのを誰かに見られたら、僕の人生は終わると思える出来栄えだった。・・・・妄想の世界では自由なのだ。

 

 そんな秘密を抱えた僕だけに、水原さんからのお誘い、というのは意外も意外な出来事なんだ。

 彼女が指定した場所は、文芸部の部室だった。

 これだけ長く彼女を見てきたが、僕は彼女が帰宅部ではなく、ちゃんと部活に所属している事を今日まで知らなかった。

 でも、何故か部室には他の部員がいない。

 ・・・・なに、このシチュエーション。

 心臓の高鳴りが音として聞こえてきそうなこの状況、僕はこの後、家に帰ってきっと描くことだろう、今日のこのシチュエーションをネタに、例のマンガを!

 ああ、早く帰ってマンガを描きたい!


「ごめんなさいね、わざわざ来てもらって。さかき君って、小学校の頃から学区が近かったのに、あまり話した事無かったよね」


「え? そうだね、近いよね、僕たち」


「私、あまり人と話すの好きじゃないから、単刀直入に聞くね。これ、榊君が描いたヤツよね」


 水原さんが机に出したのは、見覚えのあるイラストが表紙になった同人誌だった。

 僕は・・・・固まった。

 覚えのない冊子、でも表紙のイラストは間違いないく僕が描いた水原さん・・・・。

 え? 今、水原さん、「榊君が描いたヤツ」って言ってたよな・・・・


 んー?


 いや、これは世に解き放たれれば、僕の人生が終わる魔法が掛かった特級呪物! それをなぜ故、水原さんが?

 本人を目の前に、彼女が凌辱される姿が表紙の小冊子が、目の前に鎮座するこの異常なシチュエーション・・・・

 詰んだ。これはもうダメだ。

 僕はゆっくりと床に平伏し頭を下げると、水原さんへ許しを乞うた。


「違う違う、私、怒ってるんじゃないから。こんな誰にも見せた事の無い身体の裏側なんて、どうして知ってたの? とか、どうして私の秘密の場所の色形まで知ってたの? とか、スイッチ入っちゃったときの私の口癖とかどうして知ってたの? とか、全然気にして無いから」


「すいませんでした! このお咎めは、何なりとお受けいたします故、どうか、どうかこの事はご内密に・・・・」


 水原さんは、小冊子を手に取り、ペラペラとページをめくって本文を声に出して読み始めた。


「『やめて榊君! そんな事をしたら赤ちゃん出来ちゃう!』・・・・ほー、どんな事をすると出来ちゃうのかしらね、興味あるわー。『何でもするって言ったよな、ほら、何が出来るのか、自分で考えてごらん』、あらー、嫌だわ、何をして欲しいのかしら」


 あれー? あの大人しい水原さんが、やたら女王様みたいになってない?


「すいませんでした! このお咎めは、何なりとお受けいたします故、どうか、どうか命だけはお助けください!・・・・」


「ヤだわ、命なんて要らないわよ。それより、榊君って想像力豊よね。私、こんな自分を想像したこと無かったわ」


「・・・・すいません! しかし、なぜそのような特級呪物をお持ちで? それは門外不出の危険物にございまして・・・・」


「ええ、それはそうでしょう。この同人誌は私が作ったものですから」


 はい? 同人誌を? 水原さんが作った?

 そう言われて、あらためて確認すると、そこには知らないペンネームが表紙に踊っているではないか?


「あの、このペンネーム・・・・ウォーターフィールド水原さんって・・・・水原さん?」


「そうよ、私のペンネームね。これ人気なのよー、無修正の初版なんてプレミア付いちゃって、オークションでは2万を下る事は無いわね」


「・・・・2万円? そんなに? ・・・・それでも、どうして水原さんが僕の原稿を?」


「あら、あなた原稿料でも請求するつもり? 私の肢体をこれだけ好き勝手にしてくれて? へー」


「違います! そこではありません! ・・いや、そのマンガはわたくし以外の人は絶対に知らないはず! どのようなルートでご入手されたのかな? と」


「ああ、そのことね。その原稿、結構有名よ。私のお母さんと榊君のお母様って、昔から仲が良いの知ってるでしょ」


 初耳なんですけどー!

 そうなの? 母さんと水原さんのお母さん、知り合いだった?

 聞いた事無いんですけどー!


「・・・・って事は、この原稿、水原さんのお母様もご一読を?」


「一回どころか、親同士このマンガを肴に茶話会開くレベルよ」


 なんですとー!

 マンガをさかなに茶話会を!

 なんてこった!

 あのクソ親め!

 てっか、何で母さん、僕の秘密空間を掌握している!

 

「あの・・・・それって、水原様のお父上は」


「もちろん、として活用しているわよ」


 なんで酒のさかなにする慣習が出来上がっている?

 おかしいだろ! 自分の娘がこんな破廉恥な事されているマンガで!

 自分で言うのもなんだけど、娘がこれだけ陵辱されていたら普通殺人事件に発展しそうなレベルの内容だぞこれ!

 いかん、あまりに知りたくない情報が入りすぎて、気持ちが悪くなってきた。目眩が凄い。

 

「・・・・わかりました・・・・僕、自供します。なので、このことは学校側にはご内密に・・・・」


「そうね、流石に学校はマズいわね。でも、一部マニアの人にこの学校の生徒や教師が含まれていると思うわよ」


「生徒や・・・・教師も! それって一体・・」


「さっき言った通りよ。このマンガ、結構有名なのよ。評判良いのよ、榊君のマンガ」


 嬉しくありません! どうして生徒や教師の間にまで?

 どうしちゃったんだ今日は? 

 俺の人生、これからどうなる予定?

 

「あの・・・・僕は一体、どうしたら良いのでしょうか」


 あまりに壮大なスケールで繰り広げられる物語に、僕の頭は限界を迎え、水原さん本人に身も蓋も無い事を聞いてしまうのである。

 

「えー、そうね、榊君が取れる選択肢は、あまり多くはないと思うわね」


「はあ・・・・」


「これだけ闇取引で高値が付く作品、勿体ないと思わない?」


「はあ・・・・」


「あなたは描くしか無いのよ、榊君」


「はあ・・・・はあ?!」


 何を言っている? 続きを描けって? 描いちゃっていいの? 水原さん本人なのに?


「あの、それって・・・・水原さんの陵辱モノを、ってこと?」


「榊君、言い方ってものがあるでしょ。誰だって自分がマンガの中で陵辱されて嬉しい訳無いじゃない! ・・・・これはね、稼いだお金で世界中の子供を救う募金に充てる慈善事業のためなのよ」


 絶対嘘だろ!

 なんで急にボランティアの話が出てくる? 

 この話のどこに困窮している児童が出てきた?

 僕は流石にこの話には無理があると思い、あらためて机の上を見てみた。すると、鞄の中に他にも小冊子があるではないか!。


「これ、ちょっと見てもいい?」


「あっ! ちょっ、それはダメ!!」


 水原さんは、今日一番のリアクションをした。

 さっきまでマウントを取っていた彼女が見せた、素のような・・・・

 ん? あれ? この小冊子って・・・・


「あのさ水原さん、このマンガって・・・・」


「どうして見たの? それはダメって言ったのに」


「でもさ、これって・・・・僕だよね」


 その小冊子に描かれていたのは、クラスの男子たちから陵辱を受ける僕の姿だった。

 

 ・・・・ほう


「違うの、それはね、親戚の知り合いがね・・」


「ほうほう、『やめろ! そんな汚いものをねじ込まないでくれ!』・・・・ほほう、何を何処にんでしょうねー、『そんな事しても、僕の心までは縛れないぞ』・・・・おー、縛られてますな、僕が。どうなっちゃうんだろう僕? 続きが気になるなー(ハハハ)」


 そうは言ってはみたものの、正直水原さんの画力に衝撃を受けていた。

 これ、僕のよりも上手くない?

 それにしても、太っといのが出てくるなー、彼女絶対に本物の男を知らないで描いているタイプだな・・・・まあ、僕も彼女の事を全く知らずに描いているんだけど。


「・・・・ねえ榊君、取引しましょ。あなたがマンガの中で私を陵辱する事を許す代わりに、私もこの続きを描くわ。そして作りましょ、同人誌を」


 えー! この話ってそっちに行く系?

 いいの? 続き描いちゃうよ、僕、描いちゃうよ? この先の展開、かなり鬼畜ですけど、本当にいいの?

 

「あのさ、この活動って、部活?」


「んな訳ないでしょ! 全部秘密よ、私と榊君だけのね」


 そう言う彼女の頬は、少女のように赤く染まった。

 そして僕は思った。


 協力する代わりに、水原さんの資料集請求したら・・・・怒るかな、と。

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クラスの女子をモデルに手描きした僕のエロマンガが、高値で裏取引されているらしい 独立国家の作り方 @wasoo

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