ソトから守護を迎えて

沼モナカ

「こ、これが異郷の地から伝わった神の像か…」

 一人の神使えが喉をごくり、と鳴らし、生唾を飲み込む。

「そうじゃ。この像を備える事でこの地を納めよ、とお達しがきておる」

 老婆の威厳ある神使えが肯定する。

 この国は転換期を迎えている。

 国の外に跳梁跋扈する闇の存在どもから、家々を守るために他の国でも流行っている神をお迎えし、安全を手にできるかどうか。その瀬戸際に立たされれば、誰もが緊張せずにはいられない。

 老婆の神使えが指示を出し、他から伝え聞いた作法を寸分違わぬ様再現する。

 若き巫女達が今日初めて聞いた祈祷を、恐々と開始する。

「ああ、ババ様… 今、確かに、確かに神と通じた様な感覚があります」

 一人の巫女が涙し、託宣を告げる。

 国の神使えがわっと顔を綻ばす。一時の安らぎに過ぎないかもしれないが、今まさに、闇から守ってもらう術を授けてもらったのだ。

 その日から国は回り出す。今まで男達が帰ってくるか否かの狩りで怯えていた女達の不安が少し減る。

 巫女は祭壇にて託宣を聞き、人々は漸く訪れる安寧にて活気づく。

 国の外では闇の存在がニヤニヤと国を睥睨し、恐怖の爪を鳴らしているが、人々は折れない。

 安寧を。繁栄を。古来の日本であった出来事かもしれないし、なかった出来事かもしれない。

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ソトから守護を迎えて 沼モナカ @monacaoh

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