年の終わりの味

金時まめ

〜年の終わりの味〜



年の終わりが近づくと

今年も年越しそばを食べられるのだ、と思うと

どこか、気持ちがゆるみます。


わが家の定番は、祖母から母へと伝わってきた

牛肉のしぐれ煮をのせた、あたたかいお蕎麦です。

甘辛く炊いた牛肉と、たっぷりのねぎをのせるだけ。

特別な材料ではないけれど、

しぐれ煮の甘辛いお汁が、あたたかいそばつゆと混ざって

最後の一滴までおいしくいただけます。


小さい頃から食べている、うちの年越しそば。

皆さまのおうちでは、どんな年越しそばを召し上がるのでしょうか。



とはいえ、「お蕎麦」はずっと同じというわけでもなくて

これまでいろいろなものを試してきました。

スーパーで買ったものや

お蕎麦屋さんの年越しそば用のものなど。

その年その年でお店を変えたり、取り寄せたりしながら

「今年のお蕎麦はどうかな」と楽しみながら選んできたように思います。


お店で食べるととてもおいしいお蕎麦を

年越し用に予約して買ったこともありました。

けれど家で茹でてみたら、ぶつぶつと切れてしまって。

茹でるにも、やっぱり技術がいるのだなあと

お店の方の技術の高さを、あらためて感じたこともありました。


年越しそばは、だいたい大晦日の22時ごろにいただきます。

大晦日の夕方は、年越しそば用の牛肉のしぐれ煮を作ったり

翌朝のお雑煮の準備や、まだ仕上げていないおせち料理を完成させたりと

元日のためのおせちの準備をしたりして過ごします。

明日の、今年の大晦日の夕方も、きっと毎年と同じようなわたしなのだろうな

そんなことを思っています。


紅白を見ながら年越しそばを食べ

そのあとは、いつもジルベスターへ移動して

クラシック音楽で年を越します。

今年は、ラヴェルの「ボレロ」なのだそうです。


あの、少しずつ音が重なっていく曲。

静かに始まり、いろいろな楽器が加わって

いつの間にか熱を帯びて、ラストへと向かっていく。

あの感じが、とても好きです。

山あいの小さな流れが、少しずつ水を集めて

やがて大きな流れになっていくようで。


今年はボレロを聴きながら

2025年のたくさんに「ありがとう」を言って

2026年を笑顔で迎えたいと思います。




今年も、いろいろなことがありました。

楽しいこと、苦しいこと、嬉しいこと、悲しいこと。

一年はあっという間だけれど、一年はやっぱり長い。


カクヨムで創作を始めたのは、今年の夏のことです。

一年前のわたしには、想像もしていないことでした。


今年の出来事を思い返しながら

こうして年の終わりに

静かに一年を閉じる準備ができていることを

ありがたく感じています。


読んでくださった方にも

それぞれの、素敵な一年の締めくくりがありますように。

どうぞ、あたたかな年の瀬をお過ごしください。


お世話になりました。

ありがとうございました。

来年も、よろしくお願いいたします。

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