第8話
「でも、どうしてぼくのことを?」
「その、水面ちゃんに頼まれた遺品整理業者の人から聞いたんです。その人は水面ちゃんのもう一つの不思議な鍵の探索依頼も受け持っていたのですね」
「え? でも、辻褄が合わないですよ。水面ちゃんは昨日……」
ぼくは、そこまでいうと息詰まった。
息が苦しい。
その様子を覗き込むかのように、伊織さんがどこか寂しさを含んだ優しい言葉でいってくれた。
「時間です。水面ちゃんは、自分の最後の時間が切羽詰まっていて短いことを知っていたのですね。だから、遺品整理業者の人に時間が来たら、そうするよにと……。秋山 陸さんのことは、多分お母様が同室だったので、どこかで調べたのでしょうね」
「そうでしたか……あの。その遺品整理業者の方にお会いしたいのですが?」
今度は、猪里さんが答えた。
202号室のどこかの窓から微風が吹いてきた。
「ええと、私たちも会ってみたくてこれから行くとこなのよ。一緒に来る?」
「ええ。お願いします。」
すると、ぼくの後ろの方から。
「ちょっと、待ったー! 俺も付いていくぞ!!」
この元気な声で、振り向いてみるまでもなく、石谷君だとわかる。バシッと、石谷君が元気よくぼくの肩を叩いた。
「これから、私たちは水面ちゃんの実家がある天水町へ行くんだけど、後ろの人も大丈夫? そこに遺品整理業者の人がいるの。名前を藤田さんっていうんだけど」
「ええ。ぼくは大丈夫です」
「俺も大丈夫ですよ。ホラッ! 痛くもなんともないから!」
石谷くんは、包帯を巻いた足で、片脚立ちをした。
ぼくは驚いた。
こちらに向かって歩いていた看護婦さんの一人が、石谷くんの片脚立ちに気が付いた。
「石谷くん!!」
「あ! ヤッベーーー!!」
「コーラー! 石谷くん! 怪我が治るまで安静にしてなさーい!」
そして、石谷くんを物凄い速さで追い掛け回していった。
君の産声が聴きたい protocolversion 主道 学 @etoo
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