第3話 疑惑
「君たちはこのビルで何をしていた?」
和也たちはいきなり知らない男に声を掛けられて驚いた。一緒にいた女性が四人の目を探るように見ながら言う。
「私たちは警察の者だけど」
「え?」
「警察手帳を見せるとでも思ったか?」
「でも職務執行の時は見せるんじゃないですか? これ事件の捜査ですよね」
和也の隣から翔太が言った言葉に、権藤は仕方がないという様子で手帳らしいものを見せた。
しかし、見せられた和也たちもそれが警察手帳かどうかなど分からなかった。
「手帳を見せたんだから、お前たちも俺たちの質問に答えてくれ。このビルで何をしていた?」
「オレたちはこのビルの五階にある『ノエル』という店に行ってたんです」
和也が権藤の質問に答える。
「それで帰りに酔った勢いでビルに火をつけたのか?」
「え、そんな訳ないじゃないですか」
和也が声を荒げる。
「でも、お前たちが普通の人が知らない通用口から出てきたのを見たという人がいるぞ。そして、火はその辺りから出た」
「そんな、知らないよ。このビルは工事中で、オレたちは店で聞いた道順で建物から出てきたんです」
「なるほどな」
その後、和也たちは氏名、生年月日、住所、大学、学部、学年などを聞かれ解放された。その日の終電間際に家路についた。
翌日
四人は遊園地にやって来たが、前日のことが頭から離れなかった。
「なあ、昨日の火事のこと、僕たち疑われてるのかなあ」
翔太の言葉に、由香も和也と三保を交互に見ながら呟く。
「容疑者ってこと?」
「私たち何もしてないじゃない」
三保が震えるような声で言う。
和也が三保を気にしながら自信なさそうに呟く。
「なあ、昨日の三保の友達に証言してもらえばいいんじゃない?」
「アリバイってやつ?」
由香が苦笑いしながら言う。
三保も困ったように皆の顔を見ながら言葉を返す。
「このことは明子にも話してみるけど、店に行ったことを証言してもらえても、刑事さんに『その後、火をつけたんだろう』って言われたら終わりじゃない?」
「終わりって、オレたち放火してないだろう。証明できないと犯人なのか?」
和也が怒ったように言う。
その言葉に由香が呟く。
「私も分からないけど、ビルの隣の花屋さんは、私たちがあのビルから出てきたと刑事さんに言ってる。それは事実よ。そして、他に犯人らしい人がいなかったら、やっぱり疑われるんじゃない」
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勉強のすゝめ 漢字検定2級篇 snowkk @kkworld1983
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