負け確の幼馴染くん
@4692momoi
負け確の幼馴染くん
「ねぇ、友希ちは気になる人いる?」
「ウチ? ウチは中西くんかな〜」
最近気になるのは彼、負け確の幼馴染くんのことである。別に、恋愛的な意味ではないんだけどね。
負け確の幼馴染くんこと中西智也くんにはヒロインの友達として大いに興味がある。
「え〜!? 中西君は茜ちゃんのことが好きでしょ? この前告白してたじゃん」
「ん〜? でもぶっちゃけ茜っちって西園寺のことが好きじゃん。ずっと隣の席だしディスティニーってやつじゃないの?」
「確かに……! 中西君イケメンだし気になるよね!」
「失恋中でつけ入りやすそう」
「ちょっ!? ゲスいよ友希ち!」
黙々と答える僕に最近よくつるむギャルがツボに入ってしまった。いっぱい笑って愉快だよなぁこの子。結構好き。
「おはよ〜! 友希ちゃん! 美紀ピー!」
「ん〜、おは、茜っち」
「グッモニ〜」
我らがヒロインの登場だ。笑いながらギャルも挨拶を返す。
美紀ピーとはギャルのことだ。僕が美紀ピーと呼んだらそれが定着してしまった。すまぬ。しかし本人が気に入っているので問題ないだろう。
「二人とも今日相談おけな日?」
「おけの日〜」
「じゃあ昼休みじぇーけー会議すっか」
「美紀ピー今日めちゃやる気やん」
「今日は友希ちの恋バナも聴けそうだしね」
「ねー」
「二人ともさっきまで何の話してたの!?」
問い詰めようとする茜っちを美紀ピーと二人してのらりくらりと躱し、ホームルームまで耐えきった。わーたのしー。
そして何事もなく過ぎた三時限、やけに中西君から視線を感じた気がしないでもないが、何事もなく終わった。四時限は体育、これはちょっとめんどくさい。
更衣室から人がいなくなったのを待ってから入り、着替えを始めると扉が開けられた。
「あれ? 中西くん、まだ着替えてなかったんだ」
そのとき僕はシャツを脱いでいるところでこれならギリギリセーフかと思ったが、彼にはそうではなかったらしい。顔を真っ赤にして固まってしまった。早く扉を閉めてもらわないと困るんだけどな。
「中西くん、扉」
「あ、ああ、すまない……って、何でここにいるんだよ!」
扉を閉めてから中西くんは思いっきり叫んだ。流石メガネくんだ。ツッコミが抑えられないらしい。
「静かにしてよ中西くん。こうなるのが嫌だからこっそり着替えてるのに」
「騒がれて当然だろ。ここは男子更衣室だぞ?」
「………ウチ、男だよ。ほら、ブラつけてないでしょ?」
「なっ……!」
シャツを完全に脱いで胸をさらけ出してみせる。うおっあばら骨。最近ちょっとは鍛えようと思ってるんだけどなぁ。
これで証明できたかと思ったが、中西くんは顔を反らしてしまっていた。うわ、真っ赤。茜っちにもこんな赤くなってるの見たことないぞ。
「中西くん、せめて確認してよ。これで男子だって分かってくれた?」
「分かったからさっさと着替えてくれ! というかもっと言葉で説得しようとしてくれてもいいんじゃないか!?」
「だって、こっちのほうが早いじゃん。……もしかしてパンツの方が見たかった?」
「なわけないだろ! もう、男だって分かったから! あまり言及しないでくれ!」
「確かに薄着するときはブラつけるもんな……これからスカート脱ぐし、見る?」
「見ない! もう黙れ!」
「はいはい」
これ以上はセクハラで訴えられそうだし止めとこう。まぁ何だか満更でもなさそうに見えちゃうんだよなぁ。よくないよくない。もしかしたら僕、露出癖でもあるのかも。
中西くんに背を向けて僕は着替えを終えた。そこで僕はこれがまっすー先輩に借りたジャージであることを思い出す。やっべ、借りっぱなしだった。
まぁいっか。明後日返そう。
「中西くん着替え終わった?」
「まだだが……」
「一緒に行こうよ。その方が怒られにくそうだし」
「そもそも川本先生、適当にやらせて裏でタバコ吸ってるだろ。ひっくり返っても怒られないんじゃないか?」
「たしかにー、でも寂しいし一緒行こ?」
「……わかった」
終わったぞ、と言った中西くんの手を掴む。逃げられたら堪らねぇからな。そして考える暇も与えないように走り出した。
流石中西くん。平然とついてくる。そういえば二人とも五十メートル走7秒台だっけ。同じくらいだからさほど躓かない。運動場が見えてきたあたりでスピードを緩める。中西くん空気読みうまいなぁ。僕たちはよろけることもなく綺麗に止まることができた。
「茜っち〜! 今どんな感じ〜?」
「今ねー! 二人組でキャッチボールしてる! ごめん! 私もう美紀ピーと組んじゃった!」
「わかった〜! じゃあウチ中西くんにつきあってもらう!」
いいよね?と目線を向けると中西くんはため息を吐いた。
「……仕方ない。もう皆始めてるみたいだしな」
「ありがとー、中西くん。やさしー」
「はいはい」
グローブをつけている間に中西くんがボールを持って僕から距離を取る。遠い方に動いてくれるなんて本当に中西くんは優しいなぁ。まぁ、優しいのは主人公の幼馴染キャラの基本ではあるんだけどね。
ここは少女漫画の世界なんだ。と、思う。僕もなまじ顔がいいから、そういう展開によく巻き込まれてきた。そして少女漫画の世界で幼馴染は報われないことが多い。中西くんだってその一人だ。
僕は結構中西くんのことが好きだし、はっきり言って顔がタイプだ。キリリとした眉に涼やかな目元、おまけにメガネだし、優しい。正直ドタイプで、彼氏に欲しいくらいだ。
でもまぁ、最近の様子を見るに……茜っちから話を聞く限り振られちゃったんだろうな。茜っちは中西くんに告白されて西園寺くんへの気持ちに気づいたんだって。そう話してた。
ボールを投げる。
「中西くーん」
中西くんが受け止める。
「……何だ?」
中西くんがボールを投げる。
ボールを受け止める。
「中西くんってさ」
ボールを投げる。
中西くんが受け止める。
「まだ、茜っちのこと好き?」
中西くんは、ボールを投げ返さなかった。
「僕、好きな人がいるの。でも、ずっと好きでいられるか心配なんだ。……中西くんは、まだ茜っちのこと、好き?」
「……………好きだ」
中西くんがボールを投げる。
「お前みたいに、ずっと好きでいる気はないが」
僕は隣を転がるボールを見ていた。
昼休み、僕の机に二人がやってきてテキトウに机を寄せた。そして弁当を食みながら、駄弁りだす。
「友希ちあれなにー?! 中西くんのこと気になるとか言ってすぐ声をかけるとかマジヤバじゃん。フッ軽過ぎんか」
「すまぬ。実はウチ行動力の妖精さんなんよね」
「こ、行動力の妖精さんw」
また美紀ピーがツボにハマって沈んでいく。ほんとに愉快だなぁ美紀ピー。
おもしろ、とつぶやきながら腹筋が瀕死の美紀ピーを見ていると、目を輝かせた茜っちが僕の手を握った。
「友希ちゃんの気になってる人って中西くんなの!? 恋バナってそういうこと?!」
「別に、恋ではないけど。中西くんの顔タイプなんだよなー」
「おお! 顔から好きになるのもアリだと思うよ! 私もそうだったし!」
「それで実際うまくいってる茜っちが言うと説得力が違うわ」
「じゃあ早速このグニョグニョグミょを餌付けしに行くか」
善は急げと早速席を立った僕は気づかなかった。残った二人が「今友希ち明らかに噛んだよね」と、ひそひそしていることに。
クラスメイトと駄弁りながら昼食を取っていると、突然グミの袋を差し出された。見上げると先ほど色々あったクラスメイト、流川友希が俺を見下ろしていた。
「グミょあげるみょ」
みょ? と思って流川を見上げると、彼女……彼は暫くしてから耳を赤く染めた。そしてそれから瞬きする間もなく頬に衝撃が加わる。
「……すまぬ。噛んだのを聞かれたのが恥ずかしくて手が出てしまった」
「勝手に噛んで、勝手に打つのは、身勝手が過ぎるだろ!」
「すまぬ。グミ3つあげるから許して」
そう言って再び流川はグミの袋を差し出す。謝り方に引っかかったが、彼の顔が真っ赤になっているのでこれ以上詰めるのは憚られた。
「はぁ……次からは気をつけろよ」
「ん。中西くん、手」
手のひらを出せば、流川はそこに袋を傾けて器用にグミを3つだけ落とす。
「ありがと」
流川はへにゃりと顔を緩めた。その頃には大分頬の赤みも薄くなってきて、落ち着いたようで安心する。
ついでに山田にもあげるーと言って流川は俺に背を向けた。
流川が離れてから隣の田中が思いっきり肩を組んできた。
「あれは脈ありじゃね?」
「は? いや、アイツは……」
男。と言おうとして口を噤む。本人は騙すつもりはないんだろうが、おそらく隠しているようだし、大っぴらに言うべきではないだろう。
「アイツは? 何?」
「アイツは………好きなやつがいるって言ってたぞ」
「へー、って! 何で知ってるんだよ!?」
田中が何か言ってるが無視だ。無視。そもそも俺は流川のことなんてどうも思ってないんだよ。
「友希」
山田にピーチ味を全部押し付けたところで、低い声がクラスに響いた。まっすー先輩だ。これは怒ってるわけじゃなくて僕に聞こえるよう低く言ってるだけと思うから焦りはしない。
「なぁに〜? まっすー先輩もグミいる?」
「もらうけどそうじゃねぇ、5時限目体育あるんだがいい加減ジャージ返せ」
コーラ味があるのでそれを選んでまっすー先輩にあげる。これで少し機嫌よくならないだろうか。流石にジャージを返し忘れ過ぎてちょっとおこみたいだから。
ここはとことんふざけて呆れさせるしかない。
「すまぬ。持ってきたけど四限目に使っちゃった☆」
「俺にこの寒さで半袖でいろと言うのか?」
「ウチの愛と汗がしみてるけどいい?」
「………今度こそ返せよ」
「ん、明後日取りに来て。実は家に両親いないんだよ〜?」
内緒だよのポーズでにやっと笑うと頭にぽんと手を置かれた。上からため息が振ってくる。これは許されたな。
「変なこと言わなくていいからお茶請け用意しとけよ」
「りょーかい! 枝豆チンしとく!」
「甘い物よこせ」
まっすー先輩から
座ろうとしたところに美紀ピーが飛び込んできた。
「ちょちょちょ友希ち! アンタってやつはぁ……! 中西くんが気になるとか言っておいて、イケメンで三度の飯より有名な増田先輩にも手を出すとか恋愛モンスターか!?」
「まっすー先輩? 確かにイケメンだよね。結構好き」
「美紀ピー!!! 落ち着いて! というかどういう接点で先輩と仲良くなったの?!」
「二人とももちつけ〜?」
どうどうどうと、二人を座らせて僕も腰を下ろす。
接点、と言われてもなぁ。2人に話せる内容でもないんだけど。
「まっすー先輩に秘密を握られてからそれなりに仲良くなったよね」
次が昼休みだからとゆっくり着替えていたら、まっすー先輩が忘れ物を取りに来たんだ。スカートを履いてるところを見つかって、ちょっと焦った。というかまっすー先輩は中西くんとは違ってパンツまでしっかり確認してきたよね。意外とむっつりさんなのかもしれない。
「秘密って何? 友希ちゃん脅されてないよね?」
「大丈夫、ウチも先輩の秘密もらったから。まっすー先輩優しいよね」
「おー互いに命預けてる感じか」
「そうだねー」
ただ見せるのもどうかと思って、顔を赤くしてるまっすー先輩の写真を現行犯で撮っといたんだよね。それで脅しかけといたから多分大丈夫。僕たちは対等な関係です。
「ところでさ、1ヶ月後バレンタインじゃん。西園寺くんにチョコ作ろうと思うんだけどどうかな?」
「いいーんじゃね? ついでに告白しちゃいなよ」
「ウチも中西くんとまっすー先輩に作ろーかな。茜っち一緒に作ろー」
「友希ちはマジでどっちが本命なわけ?」
「どっちも
「本気と書いてマジと読むな?」
あ、美紀ピーがまたツボにハマってしまった。ほんとに愉快だなぁ美紀ピー。
茜っちとチョコ作るの楽しみ。
流川のことなんて別に好きじゃなかった。茜と仲がいいことは知っていたが、それだけで、男だとは思いもしなかった。
それがこんなになるとは思いもしなかった。
なんとなく周りをうろちょろしてるアイツを忙しないと捕まえて注意して、何かとお菓子を分けようとするソイツへのお返しを常にポケットに用意していて、わけもなく隣にいるソイツの頭の上に手を置いて、移動中は急に走り出して怪我をしないように手首を掴んでいる。そんな馬鹿げた俺がいた。
「それ、恋だろ」
イマジナリー田中が五月蝿い。なんだよこいつ。
それは置いておいて、いつの間にか共に下校するのが普通になっている流川を見下ろす。
電線の上の雀を眺めていた流川が俺の方を向いた。
「中西くん、僕のこと友希って呼んでくれない?」
「なんだよ、急に」
「僕さ、明後日転校するんだ」
「………は?」
いつもによによとしている流川はそのとき笑っていなかった。明らかにおかしい。
なんで転校なんて大事なこといきなり教えるのか意味が分からない。
「……なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ」
「えー? そのときはそこまで仲良く無かったでしょ?」
「…………」
「実はね、まだ中西くんにしかことのこと教えてないの。もしかしたら茜っちとかには教えないかもしれない。明日、最後の学校になるから。中西くん、そのときには決めといて。僕のこと、なんて呼ぶか」
ずっと流川に悩みなんてないものと思っていた。いつでも能天気で、空気が読めなくて、馬鹿。もしかしたらそう見えるように、彼女……彼は演じているのかもしれないと初めて気づかされた。
いつも小さいと思っていたその背があまりに小さくて、俺は、俺はその背をずっと隠していたいと思った。イマジナリー田中にアッパーをかます。
この気持ちが何かなんて俺はとっくに予習済みだった。
「逃げやがってバカ」
分かれ道に駆け込んだソイツの陰を睨みつける。返事はもちろん返ってこない。
今日でヒロインの友達はおしまい。この学校も、友希ちゃんもおしまい。何もかも好きだった。茜っちも美紀ピーも、まっすー先輩も、中西くんも、あと山田も。
山田、一ヶ月前にダイエットだのなんだの言って僕のグミを断ろうとしてたけど、結局1ミリ……1グラムも痩せてなかったな。
今日はバレンタインデー。勇気を出して感謝を伝える日だ。勇気を出してお別れしようじゃないか。
「友希ちゃん! いつ、西園寺くんに渡そうかな?」
「ウチと作ったんだしメチャウマだと思うから鮮度がいいほうがいいんじゃない? ウチは昼休みにまっすー先輩に渡しに行くけどな」
「二人ともファイトー」
茜っちすごい緊張してる。こりゃ転校のことは話さない方がいいな。まぁ茜っちの告白は勝確だと思うけどねー、一応心配しとくか。
昼休み、2年生の教室がある2階へと向かう。まっすー先輩の教室は階段の直ぐ側にあった。
「失礼しまーす、まっすー先輩にいますかー?」
「なんの用だ?」
「うわっ」
後ろからまっすー先輩の声が降ってきてびっくりする。
「背後をとられるとは……! 一生の不覚!」
「お前の一挙一動一生の恥だろ」
「韻踏まないで?」
まっすー先輩は相変わらず冷たい。まぁ、こんな態度取っといて僕のことが好きなの知ってるんだけどね。「入り口は邪魔だし中に入れ」と促されて先輩の席に座らせてもらう。先輩は僕の前にしゃがみ込んで目線を合わせてくれた。
僕は持ってきた紙袋をまっすー先輩に差し出して頭を下げる。
「まっすー先輩! 今までありがとうございました!」
「…………お前、死ぬのか?」
とにかく感謝は目を見て言えと言って、まっすー先輩は無理やり僕に前を向かせる。
「こういう強引なところも好き。ありがとう、まっすー先輩。ジャージいっぱい返さなくても許してくれてありがとう。部活のお土産くれてありがとう。……そんな先輩が大好き! 今までお世話になりました!」
「ますます死にそうになるんじゃねぇ!」
そう言いつつも先輩はチョコを受け取ってくれた。流石まっすー先輩……!
「何があったんだよ」
「実は僕は明日転校するので、今日でお別れなんだよね〜」
「早く言えバカ! 変な心配しただろうが」
「え〜〜? 寂しがってよ、せんぱぁい!」
「……そんな無駄なことはしねぇよ」
先輩、塩すぎる。最後くらいもっとデレてほしかった。というか変な心配って何だったんだろう。
「友希。お前、どうせ帰ってくるだろ。そのときは俺んちに寄れよ。てかもう泊まれ」
「ご両親いない?」
「いたって問題ないだろ」
あ、まっすー先輩が普通に笑った。大好きだー!と先輩の頭を抱きしめれば容赦なくはがされる。デレってすごい貴重品なんだ。
まっすー先輩の席を奪ったまま昼休みを潰して放課後、中西くんを帰りに誘う。中西くんは一つ頷いた。
二人きりの帰り道はこれで最後だ。もう空は虹色の時間にさしかかっている。
「中西くん」
「智也」
「智也くん、ハッピーバレンタイン! 三日前に作ったチョコだから早く食べなよ?」
「それ、増田先輩にも渡してたんだってな。話題になってたぞ」
「え?! そうなの!?」
僕のチョコを受け取った智也くんは何やら疲れた目で教えてくれた。もしかしたら僕の教室まで問い合わせが来たのかもしれない。すると仲がいいと噂の智也くんに問い合わせが殺到、散々な目に遭ったのかも。それは申し訳ない。まっすー先輩がそれなりにモテるということを当然だと思ってたから意識になかった。
「友希」
「智也くん! ……あ、かぶっちゃった。なんて言ったの?」
「……何でもない」
何かを呑み込むような智也くんの様子に何を言いたかったのか気になったが、聞き返すこともできなかった。僕には時間がないから。
「あのね、何で僕がこんな格好してると思う?」
「趣味じゃないのか」
「それも大いにあるねー。でもきっかけはあんまモテないようにするためかな。僕イケメンだし」
「ナルシスト……」
「何でモテたくなかったかというとね、僕、好きな女の子がいるの。幼馴染で、結婚しようねって指切りした、大好きで可愛い幼馴染。その子がいる高校に転校するんだ」
何で僕が智也くんに興味があったと思う? それはね、僕だって負け確の幼馴染くんだからなんだよ。
「嫌になったら戻ってきてもいい?」
涙がこぼれそうな顔を上げることができないで、俯いたまま首を傾げる。目の前を影が覆って、温もりが僕を包む。智也くんが抱きしめてくれているらしい。
「……はぁ、分かった。面倒見てやるよ。……でも、帰ってきたときは覚悟しとけよ」
「うん。ありがとう。智也くん」
久しぶりに女子の悲鳴が五月蝿い。まぁ当然か。
「今日は転校生を紹介します」
スカートを脱いで君に向かい合う。
「はじめましてみなさん、俺は流川友希です。ミカちゃん、君のフィアンセが迎えに来たよ」
元、にこれからなるんだけどね。
「今日は転校生を紹介します。まあ、2か月ぶりだから新鮮さも何もないけどな。一体何の問題を起こしたんだ? 流川」
「ウチが可愛すぎただけじゃないないっすか? みなさんはじめましてアンド久しぶりー。 ウチは流川友希。特技は転校とお菓子作りー、よろしくお願いしまーす」
「おかえり、友希」
「ただいまー」
負け確の幼馴染くん @4692momoi
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