銀色の祭壇に鎮座する秘宝を求め、私は「理想」を掻き集める
不思議乃九
銀色の祭壇に鎮座する秘宝を求め、私は「理想」を掻き集める
この「無印良品」という場所は、もはや単なる市井の店ではない。あれは、混沌たる日常に秩序と意味を刻むための、深遠なる「試練の迷宮」である。
本日、私はこの、整然と棚が連なる広大な「探索領域」へと足を踏み入れた。我が「探索目的」は、言うまでもなく、カレーなる「秘宝」の獲得である。
ふと、古の賢者たちが残した謎かけが脳裏をよぎる。「この広大な『ムジのダンジョン』は、一体いつから『カレーの聖域』と化したのか?」と。
もちろん、この迷宮には、堅牢なる防具(衣料)も、空間を支配する調度品(家具)も存在する。近頃では、一瞬の歓喜を閉じ込めた「凍結された甘露(アイス)」や、過去の記憶を呼び覚ます「円盤状の菓子(どら焼き)」、そして止まらぬ魅惑の「弾ける穀物(ポップコーン)」までもが、新たなアイテムとして発見されている。
しかし、あの銀色に輝く「パウチの祭壇」へと足を踏み入れたその瞬間、私の内なる「生活の羅針盤」は、その指針をすべて「スパイスの導き」へと転換させられてしまうのだ。
戦利品を入れる「カゴ」に、数種類の「レトルトカレーの巻物」を滑り込ませる。「バターチキン」は、迷宮探索の基本中の基本、古き良き「古典の魔法」。そして「グリーンカレー」は、日常にささやかな刺激を求める「冒険者の証」だ。そこに「ジャスミンライスの小袋」を数個、迷うことなく追加する。この「選定」という行為そのものが、現代において最も贅沢な「アイテム編集作業」であり、私の精神(アタマ)の中はすでに、今宵開かれる「カレーパーリー」という名の「祝宴」の、芳醇なる香りで満たされているのだ。
カレーという名の「自己との対話」
「ムジのダンジョン」に秘められたカレーが、これほどまでに多くの冒険者に求められるのは、それが単なる「効率化された食事」ではないからだ。我々冒険者は、数十種類もの「選択の扉」の中から、その時の自身の「HP(体力)」や「MP(精神力)」、あるいは「高揚の呪文」の詠唱レベルに合わせて、最適な「解(アンサー)」を「探求(キュレーション)」しているのである。
これは、まさに「哲学者の石」を探すような行為だ。
例えば、我々が「三種のトマトのカレー」を手に取るとき、それは単に酸味を欲しているのではない。その「リコピンの鮮やかな輝き」に、単調な日常という名の「荒野」に彩りを託しているのだ。あるいは「マッサマン」を選ぶとき、我々は遠き異国の「熱波」に、自身の内に停滞した「空気」をかき混ぜてほしいと願う。
「ムジのダンジョン」の内部を歩き、陳列された「アイテム」を眺めることは、魔法の鏡の中に映る自分と対峙することに似ている。
「この『休憩の椅子』に座る私は、今より少しだけ『穏やかなる生活』を送れているだろうか?」
「この『オーガニックコットンの衣』を身につける私は、もう少しだけ『己を許せる冒険者』になっているだろうか?」
我々は、単なる「モノ」を求めているのではない。
「こうありたい」という、自身の「理想の断片」を、銀色のパウチや美しいパッケージという名の「宝箱」から、ひとつひとつ拾い集めているのだ。
【了】
銀色の祭壇に鎮座する秘宝を求め、私は「理想」を掻き集める 不思議乃九 @chill_mana
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